民医連新聞

2007年8月20日

相談室日誌 連載245 病気しても安心して生活するために 増子 未知可(ましこ みちか)

夏の暑い日、Aさん(六〇代・男性)は救急車で当院へ搬送されてきました。転倒して骨折し、手術が必要な病状でした。
 Aさんは糖尿病が悪化し、足壊疽などの経過から仕事ができなくなり退職。路上生活になり、住所不定、頼れる身内も保険証もなく、数十万円の所持金があるだけでした。
 まず、保険に加入する手続きが必要です。住所不定では加入できないため、住所を生活支援ハウス(仕事を探している間の施設)に移しました。また、金銭の管理、書類の取り寄せ、買い物など入院生活も支援しました。
 Aさんは、失業保険で半年間は月一三万円ほどもらっていたようです。保険料の滞納分を支払い、高額療養費の委任を利用し、本人に代わって申請し、年金の 繰上げ支給の手続きなどを援助しました。ほかに、身体障害者手帳を取得して、入院費自己負担の軽減をはかりました(埼玉県は身障三級以上で医療費助成があ ります)。
 入院してすぐに、心臓が悪いことが分かり、他院で手術することになりました。その病院の相談員に経過や保証人がいないこと、医療費の心配があることなどを伝え、生活支援も依頼しました。
 その後、Aさんは無事に心臓手術を終え、骨折の手術をするために再び当院に戻ってきました。現在は、リハビリで杖歩行ができるまでに回復しました。退院 の準備で住居を探し、生活支援ハウス入所が決まりました。家屋がAさんの状態に合っているかどうか評価にいき、環境を整えて退院を迎えました。Aさんは生 活保護を申請して、いまもそこで生活をしています。Aさんの希望は、アパートで一人暮らしをすることです。私たちは、Aさんがもっと自立した生活を送れる よう、支援していきたいと思います。
 Aさんは、今まで一生懸命仕事をしていました。「病気さえしなければ」というAさんの言葉が、いまでも頭から離れません。誰にも病気をしたときに大きな 不安があります。病気をきっかけに、生活が崩れていくことが多いものです。病院の相談員として、何を支援していくか、何が支援なのかを考え、安心して生活 していける地域を築いていきたいと思います。

(民医連新聞 第1410号 2007年8月20日)

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