民医連新聞

2007年8月6日

国保料払えない子育て世帯増え 子どもからも保険証奪う 自治体への要請で中止も

 国民健康保険料(税)の滞納世帯に対し、制裁として資格証明書が交付されています。子どものいる世帯にも容赦なく発行され、大きな問題に。 既報(四月一六日号)のように東京・板橋区では、医療費助成の対象となる中学三年生までの子どもを、資格書の対象から外しました。各地で「子どもにお金の 心配なく医療を受けさせたい」との声があがっています。

乳幼児のいる世帯にも

 子どものいる世帯の貧困も指摘されています(図)。非正規雇用、低賃金などで、高い国保料が支払えない世帯が増えています。
 千葉民医連の今井町診療所に〇六年五月、二歳の子どもが祖母に連れられて受診。乳幼児保険証と資格書を持参しました。
 幸い、軽い胃腸炎でしたが一〇割負担になることを知らなかった祖母は「役所に相談する」と帰りました。しかし数カ月後、再び資格書を持って来院しました。
 事務の清家宏二さんは「千葉市は就学前までの子どもに対し、医療費助成を実施している。その助成対象になる子どもには、資格書を発行しないようにするべきだ」と問題視しています。
 国民健康保険法施行令では「特別の事情」(※)があるときは、資格書を発行しないと定められ、その判断は自治体にまかされています。

※「特別の事情」…「災害や盗難にあった」「世帯主や親族が病気になったり負傷した」「世帯主が事業を廃止、休止、著しく損失した」など、国は特別な事情があるときは、資格書を発行しないとしています。

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小・中学生が3692人

 「子どもから保険証を取りあげてはならない」。横浜勤労者福祉協会が加わる横浜市社保協も、問題にしています。昨年末、横浜市に対して「資格書発行世帯の中に、小学生から中学生の子どもたちが何人いるか明らかにせよ」と求めました。
 二月現在、資格書発行世帯が二万五一六三世帯。小学生から中学生の子どもが三六九二人いました。
 横浜市は「負担の公平」「滞納者と接触の機会を得るため」と、異常な資格書の大量発行を続けています。同社保協は「子どもたちの医療を受ける権利を行政が奪うな」の運動を広めていく方針です。

「発行しない」山形

 山形県では社保協のキャラバンに対し、六自治体が「子どものいる世帯に資格書を発行しない」と回答し、注目されています。
 山形民医連が参加する山形県社保協は二〇年間、国保、医療、介護改善などの要求をもって、自治体要請キャラバンを続けています。
 一昨年のキャラバンで、子どものいる世帯には資格書を発行していない自治体が県内に一つあることを知り、「子どもから受療権を奪わないで」とほかの自治体に要求を出しました。
 この要求を受けとめた五自治体の一つが山形市。学校の歯科検診でむし歯が見つかっても、なかなか治療に行かない子どもがいました。学校側が事情を聞いた ところ、子どもの家庭に資格書が発行されていたことが判明しました。高い治療費が払えないので、行きそびれていたのです。市はその後「子どものいる世帯に は資格書を発行しないよう配慮する」と表明しました。
 同社保協はキャラバンで山形市の対応も伝え、中止にふみきった自治体が増えました。山形民医連の守岡等さんは話します。「二〇年間のキャラバンで自治体 もいっしょに考える雰囲気ができ、要求を聞いてくれる関係になった。制度が改善し、私たちも確信になった。子どもを資格書発行の対象から除外するのは当 然。全国に広げたい」。
 病院にもかかれず、命を落とすような事態を招いてはなりません。そうならないために、いっそう運動を広げていくことが必要です。

(民医連新聞 第1409号 2007年8月6日)

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