民医連新聞

2007年8月6日

相談室日誌 連載244 保護費のピンハネではないのか? 岡元 かほる

Aさん(七〇代・男性)は独居で、生活保護受給者です。今年二月に結核性胸膜炎で入院。六月に退院しましたが、歩行不安定で転倒の危険があり、認知症も あって短期記憶障害、理解力、判断力も低下しています。金銭の管理ができず、薬もきちんと飲めないため、一人暮らしが不安でした。そこで、保健所とヘル パーに服薬の確認、通院介助と週二回の調理、買い物を頼むことにしました。
 しかし、もう一つ問題が。Aさんの保護費は約一二万のはずが、Aさんが使えるお金が二万円しかないのです。結核が再燃しないよう十分な栄養をとり、免疫 力を低下させないことが大切なのに、Aさんはこの二万円で食材と生活用品すべて賄わなくてはなりません。Aさんに聞くと「アパートの管理人から二万円と米 が届くだけ。通帳は管理人が持っていて、出入りが分からない」と言いました。管理人に確認すると「家賃、水道光熱費として約一〇万円引いている。二万円あ れば十分やれる。みんなそうしている」と、こともなげに言うのです。
 Aさんは幼いときに両親を亡くし、奉公に出されました。学校に行けず、読み書きが十分できません。定職に就けず、結婚後も出稼ぎの生活で妻子に去られ、兄弟も死に身寄りがありません。 
 お金があるとすぐ使ってしまうため、一週間五〇〇〇円ずつ届けてもらい、三〇〇〇円を買い物用にヘルパーが預かりましたが、これでは着替えのシャツを買 うこともできません。食べ物も買えなくなると、味噌と卵だけの食事が続きます。
 Aさんは、B市で路上生活をしていた時、「仕事があるよ」と声をかけられ、現在のアパートにつれて来られたそうです。アパートには同じような人が集めら れています。アパートを借り上げている会社の背後関係は不明で、得体の知れない怖さがあります。ひどいやり方です。役所の生活支援課はこういう状況を知り ながら「個人の契約だから行政は介入できない」と、何の指導も手も打とうとしません。自立支援といいながら「お金は出している。あとは自己責任」と知らん 振りの態度でよいのでしょうか。行政も加えてなんとか対応を検討していかなくては…。

(民医連新聞 第1409号 2007年8月6日)

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