民医連新聞

2007年5月7日

記者の駆け歩きレポート(12) 一人ひとりが主役になった発表会 自信ついて分かりあえた 神奈川・老健施設 樹の丘(きのおか)

 介護保険の改悪で介護施設の経営は厳しくなり、負担が増えた利用者の目もシビアに。川崎医療 生協の老健「樹の丘」(八〇床)では「選ばれる施設づくり」をめざし、介護福祉士、看護師をはじめ多様な職種が、ケアの視点を育て業務改善の力をつけよう と、全職員が一つ発表する「個別症例発表会」を二月に初めて開きました。一人ひとりが主役の発表会を終え、「前向きになった」「コミュニケーションが良く なった」と元気な声が出ています。(小林裕子記者)

全員が一つ発表しよう

 発表テーマは「介護事業に関するもの」なら何でもよく、一〇分で形式は自由。呼びかけて約二カ月、非常勤者も含め、ほぼ全員の四二人がまとめ上げました。発表会は土曜日を四回使い、組合員さんや法人にも声をかけました。
 原稿用紙に書いた人、パワーポイント、利用者のクラブ活動を作品で発表した人、腰痛体操やトランス(移動)の仕方などを実演した人、メンタルヘルス自己 管理に役立つ「瞑想」を調べ、参加者を相手に指導した人もいました。
 介護福祉士の一人は「改悪と言われた介護保険制度を見つめて」で、憲法二五条の視点から、人間らしい生活を妨げる改悪を報告しました。ヘルパーの一人は 「排泄介助でのプライバシー保護について」の考察で、排泄介助をドアを開けたままでやってよいか? おむつを見えるように持って歩くのはどうなのか? と 問いかけ、「ハッ」とさせました。
 「樹の丘・晩酌計画~またの名を居酒屋いっき(樹)」を発表した介護福祉士は、花見と花火大会以外は禁止のお酒を「利用者と介護者の立場を超えた人間と人間で、いっしょに飲もう」と提案。
 看護師長は、家族に渡す利用者さんの「生活状況お知らせ表」がどう評価されているか、アンケート調査して発表。来られない家族に喜ばれていました。ほ か、自分の一日の動きを紹介したり、障害をもつ友人の事例を紹介したり、どれも知恵を絞った発表でした。

まとめることが力に

 発表会の「言い出しっぺ」がいます。看護師一〇年目の白倉仁慈さん、学習委員です。
 久地(くじ)診療所に併設する樹の丘には、胃ろうや認知症、合併症など医療依存度の高い人や、経済的に困難な人もいます。開設して六年、介護保険や医療 制度の激変のなか、選ばれる施設づくりをめざすための業務改善、ケアや質の向上、新規利用者を増やす課題があります。職員が力を発揮するには「主体的な学 習が必要」と考える白倉さんは「全員の発表会」を提案。「発表をまとめる中でケアをふり返り、自己評価の力がつく。とくに新しいケアワーカーには大切。発 表を聞いてお互いの思いもわかりあえる」という思いでした。
 若い職員は「個」「孤」を好む?と気になってもいました。活動交流集会などにチームで発表する場合、まとめ係がいつも同じ人になったり、身を引き気味に する人が出がち。「一人一発表は若者気分に合ったかも」と白倉さん。

話しかけやすくなった

 発表会について仲間の声は?
 若い介護福祉士が「もうやりたくないよ」と冗談まじりに笑いました。ベテラン栄養師の西村知子さんは「若い人の発表は新鮮でした。学習委員がよく職場を まわり準備したおかげ」と。西村さんも「テーマどうしよう」と相談されアドバイス。「発表で自信がついたのでは」と評価しています。
 「他の人の考えが分かったことに意味があった。いっしょに働いていきたい(仲間だ)と思った」と前川晶子さん(OT)。「発表会のあと雰囲気がいい。職 種が違うと話がかみ合わない、と感じたこともあったけど、話しかけやすくなった」と成田洋子さん(OT)。
 副産物はコミュニケーションの向上だったようです。

(民医連新聞 第1403号 2007年5月7日)

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