民医連新聞

2007年4月2日

フォーカス医療・福祉の実践(12) 教訓を風化させない医療安全大会のとりくみ 大阪 医療法人・同仁会

 大阪・同仁会の耳原総合病院では二〇〇〇年六月~七月にセラチア菌院内感染が起きました。それから六年以上が経過し、事件を経験 した職員は、半数近くになりました。教訓を風化させないために、毎年同じ時期に同じ場所で「医療安全大会」を開いています。〇七年三月に福岡で行われた 「第三回 医療安全交流集会(四三県連・二九六人)」で、同法人の伊藤泰司部長が発表しました。

 耳原総合病院は、セラチア菌院内感染事件時、早急に公表して、専門家など外部の協力も得て、原因を究明し、対策を講じました。そして二度と起こさないよう、毎年七月に医療安全大会を開いています。〇一年から実施し、第六回になりました。
 大会には、二つの目的を位置づけています。一つは「事故防止のため、国内外のすすんだ考え方、とりくみなど、新しい視点を学ぶ」。二つめは「各職場で検 討し、努力や工夫をしている実践を法人全体で交流する」です。また昨年から、法人の医療安全対策の年度報告もしています。

安全意識の低下を防ぐ

 大会の中心テーマは、院内感染問題、医療事故防止を交互にとりあげています。
 〇一年の第一回は、院内感染の再発防止と原因究明の出発点でした。日本感染管理支援協会・理事長の土井英史さんの講演を企画。また専門医を招き、感染防 止の基本を学習しました。第二回は「安全・安心・信頼の医療を提供するために」をテーマにしました。
 第五回大会では、感染対策マニュアルがかなり整備され、安全意識も熟成されてはいましたが、「なぜこういう対策をしているか、なぜ大事か」という危機感 が非常に弱くなっていました。実行委員会では、教訓の風化を防がなくてはいけないと議論し、「あれから五年、感染防止の原点を医療・介護のすみずみに」を テーマにしました。事件調査を担当した外部の医師に、当時をふり返りながら院内感染対策について、講演してもらいました。

患者参加の医療安全

 昨年の第六回は「患者・家族とつくる医療・介護の安全」をテーマにしました。事前に「医療安全 と患者参加がすすんでいる」と、雑誌で紹介された病院に共同組織の方とともに見学に行きました。また「医療事故の被害者の体験を聞こう」と、医療過誤で子 どもさんを失った豊田郁子さん(新葛飾病院・セーフティーマネージャー)に講演をお願いしました。また、当院の感染で亡くなった患者さまの家族にもお話し していただくようお願いしました。しかし「耳原は大好きだけど、ショックが大きすぎて、まだできない」と断られました。代わりにその方の友人であり、緩和 ケア病棟ボランティアで活躍中の方が「ボランティア活動を通してとりくむ 語り継ぐ安全」をテーマに話してくれました。
 医療事故は、コミュニケーション不足、病院や医療従事者への不満が根底にあります。事故防止のため、日常的に患者・家族とのコミュニケーションを強めることが課題です。
 今回は、医療事故被害者の体験から、患者さまやその家族、共同組織と協力して、事故防止にとりくむという内容まで、深めてこられたと考えています。ここ までの六回で医療安全のために必要なことなどいろいろと学びました。
 安全大会の内容は深まっていますし、単にマニュアルで済まさず、常になぜそれが必要かを考えさせる力をはぐくむねらいは、ある程度の効果をあげています。
 安全大会で具体的な方針を提起すればするほど、医療安全推進体制の強化が課題となっています。

(民医連新聞 第1401号 2007年4月2日)

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