医療・福祉関係者のみなさま

2010年4月5日

フォーカス 私たちの実践 腰痛による休業者をゼロに 滋賀・老健日和(ひより)の里 ノー・リフティング・ポリシーの実践で、介助の負担を軽減

 老健日和の里(滋賀)では、介助に伴う腰痛のため、休業・退職者があい次ぎました。これを何とかしようと、職場の労働安全衛生委 員会を中心にさまざまな改善を行い、今では休業者がゼロになっています。第九回学術運動交流集会で、笹井加奈子さん(介護福祉士)が発表しました。

 当施設は開設して六年になります。当初から地域の期待も大きく、介護度が高い人も断らず受け入 れてきました。しかし開設三年目になると腰痛のため職員の休業が多発し、残る職員の負担がさらに増え、新たな休業・退職者を生むという負の連鎖に陥りまし た。入所制限をせざるをえず、ベッド稼働率が八〇%にまで落ち込み、経営も悪化しました。
 管理者と産業医が話し合い、これ以上の休業者を出さないために、入所制限を続けながら業務の見直しや職員の補充を行いました。開設四年目の二〇〇七年七 月には、労働安全衛生委員会を設けました。施設長や産業医など八人で構成し、月一回、職場巡視と会議を行っています。

ボックス型シーツの導入など改善重ねる

 当施設では、開設時からリフトや介護補助具を積極的に導入してきましたが、委員会で検討した結果、リフトが有効に使われていないこと、介助姿勢にも問題があることが明確になりました。
 全職員が腰痛予防の意識を持って行動できるように、と〇八年に北欧式トランスファーの学習会、オーストラリアにおけるノー・リフティング・ポリシーの講 習会を行いました。これは介護機器や福祉用具を活用することで、人の力だけによる患者の移動・移乗介助を極力少なくしようとする考え方です。
 徐じょに学習効果が現れ、職員は介護姿勢に注意を払い、リフトを積極的、有効に使用できるようになりました。
 また職場巡視の際、「今のシーツ交換作業は腰への負担が重い」との指摘を受けました。そこで委員会で議論を重ね、マットレスにかぶせるボックス型シーツ に変更すれば、負担が少なく作業も簡単で時間も短縮できるのではという結論になりました。
 既製品がないためシーツのレンタル業者と交渉して特別に注文し、〇八年四月からボックス型シーツを導入。作業時間は短縮され、中腰の姿勢も減り、腰をねじる動作もないなど、作業負担も軽減できました。
 しかし今度はシーツ表面が滑りやすく転落の危険性を指摘されました。現在はシーツの上にラバーシーツを敷くことで、この問題を解決しています。
 その他、特殊浴槽への入浴介助の負担を減らすために天井走行型リフトを導入する、ユニフォームのズボンにつける膝当てパッドの装着率をアップさせる、作業前にストレッチを行うことの推進なども行いました。

休業者ゼロを達成

 この二年間のとりくみの結果、〇九年六月の健診では要休業者も要業務軽減者もゼロとなり、ベッド稼働率も九七%にまで改善できました。
 今年度は、リフトや介護補助具を正しく使うため、各フロアに指導者を置きました。また新入職員がリフトの必要性について理解できるよう研修システムも改 善。一方で、現在のリフトの数ではまだ抱え上げる作業を避けられないため、介護労働者設備等整備モデル奨励金を申請してリフトを購入し、増設を予定してい ます。
 ノー・リフティング・ポリシーの実践を施設の運営方針に掲げ、職員と利用者にとって安全で快適な介護に向けて、今後も研修や機器導入をすすめていく予定です。

(民医連新聞 第1473号 2010年4月5日)

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