医療・福祉関係者のみなさま

2010年1月4日

キラリ民医連の医療・介護 障害児の母と力あわせ医療的ケア支援制度つくる 群馬・とね訪問看護ステーション 栗林由美子(看護師)

経管栄養、痰の吸引、導尿など「医療的ケア」を日常的に受けながら、在宅生活をする障害児が増えています。しかし、支援体制の整備は遅れており、母親が 二四時間介護をするケースが大半です。子どもが学校や施設に通う場合も、介護者が同行してケアしなければならず、介護人を頼んだり、訪問看護を利用するの は自費となります。経済的負担が大きく、子の社会参加を断念する場合がほとんどです。
 利根沼田地域では二〇〇八年に、こうした事態を解決するための「医療的ケア支援事業」がスタートしました。
 きっかけは二人の障害児でした。
 Aちゃん(11)は市内の養護学校に通学。学校での吸引の依頼を当ステーションが受け、学校とも相談のうえ、訪問看護を開始しました。ところが、医療保 険が適用されず、自費となることがわかり、訪問看護は二五回で中止。母親が仕事を中断し、学校へ吸引に行くことになりました。
 B君(4つ)は、二〇〇六年から当ステーションから自宅へ訪問看護に行っていました。その後、「同じ年の子とふれあいを持たせたいので、市内の通所施設 で訪問看護を利用したい」との相談を受けましたが、自費になるため利用できず、母親が施設に通うことになりました。
 B君の母親の働きかけで、市の相談員や保健福祉課、通所施設責任者による個別支援会議が開かれました。そして、地域自立支援協議会で「医療的ケア支援事 業」の検討が始まりました。障害児を抱えるお母さんたちが粘り強く働きかけました。当ステーションも参加し、医療的ケアの学習会や料金設定について情報な どを提供しました。
 制度ができ、上限八〇〇〇円(月)の負担で、訪問看護が利用可能に。現在、三人の障害児に訪問看護をしています。Aちゃんの通う養護学校では、看護師が常駐するようになりました。
 B君の母親は、「私がしなければ、というプレッシャーから解放され、安心して生活が送れている。時間的・精神的に余裕ができた」と語り、施設の行事にも 親子で参加しています。B君自身も、自宅だけにいたときに比べて表情が豊かになり、自分の欲求を伝えたり、おもいやりの行動をみせるようになりました。
 この支援事業を利用することで、住み慣れた場所で、障害を抱えながらも社会参加ができると感じます。介護者の安心感やゆとりも確保できます。この経験を 通じて、「必要なものは必要だ」と訴え、働きかけていくことの重要性を学びました。運用のなかで問題点が出てくると思いますが、改善策を提案しながら、利 用者と家族が安心できる環境づくりに協力していきたいと思います。

(民医連新聞 第1467号 2010年1月4日)

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