民医連新聞

2002年6月21日

介護実態調査がしめしたもの/介護保険の矛盾示す

2000 介護実態調査がしめしたもの
日本リハビリテーション医学会報告(1)

5題のポスター発表で介護保険の矛盾示す
水尻強志(宮城・長町病院、医師)

 5月9日~11日、東京で行われた日本リハビリテーション医学会で五題のポスター発表を行いました。内容は、全 日本民医連でとりくまれた2000年介護実態調査の結果をもとにした研究です。全日本民医連老人医療・福祉部の在宅活動委員だった私と門祐輔医師(京都・ 田中診療所)、および上城輝士医師(高知・高知生協病院)が発表。同学会の一つのポスター分科会を占有するような形でした。質疑応答も含め活発なセッショ ンとなりました。
 発表のテーマと概略は以下のとおりです。

▽  ▽  ▽

1.「介護保険は抜本的な改善が必要」(発表者:門医師、京都民医連)
 介護保険実施により低所得者の介護費用は約二・六倍に。利用サービスを減らした最大の理由は「自己負担が増えたから」でした。また低所得者では介護度が高くなると、在宅で生活できないことが示唆されます。
2.「介護離職に関係する因子の検討」(発表者:水尻医師、宮城民医連)
 本調査では介護のために仕事をやめた介護離職者は一九九四人で、主介護者の一二・九%でした。要介護3以上で、世帯収入では年間二〇〇万円未満層で、離職が多い傾向がありました。
3.「介護離職と介護保険利用状況との関係」(発表者:水尻医師、宮城民医連)
 介護離職群の介護保険利用状況と経済状況の関係について検討。離職群は就労群と比べ、利用限度額に対する利用率が低い傾向があり、保険料・利用料の負担 感を約六割が訴えていました。離職群には低所得層が多く、重度障害者を介護している離職群では、家族介護に依存している現状がありました。
4.「主介護者の睡眠障害についての検討」(発表者:上城医師、高知民医連)
 主介護者の約半数に睡眠障害を認めました。睡眠障害と最も関係が深かったのは要介護者の状況で、痴呆者群と移動困難者群で高い傾向を示しました。また、介護協力者の有無が睡眠障害に関係していました。
5.「痴呆群検討で判明した介護保険の矛盾」(発表者:水尻医師、宮城民医連)
 痴呆群の要介護度は移動困難群と比べて低く、利用単位では差がありませんでした。支給限度額に対する利用率は平均より痴呆群では高い傾向がありました。 痴呆群の通所ケア利用率、利用回数、短期入所利用率、利用回数を検討した結果、介護サービスの必要度に比べ、要介護認定が低く、支給限度額に対する利用率 が高いなどがわかりました。

▽  ▽  ▽

 これらの発表で、介護保険が特に低所得者や痴呆のある人に矛盾をもたらしており、介護保険は抜本的な改善が必要であることを明らかにしました。
 (この1・4・5の発表について、次号より順次詳しい内容を連載する予定です。)

▽  ▽  ▽

 【2000年介護実態調査】介護保険がスタートして半年後の11月時点で、全日本民医連の介護保健事業所の在宅サービスを利用していた2万2202人に聞き取り調査を行ったもの。この調査には1万人以上の職員が参加。全国でも類を見ない大規模な調査で、昨年六月に報告書がでています。

(民医連新聞2002年06月21日/1279号)

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