民医連新聞

2006年12月4日

フォーカス 医療・福祉の実践(9) NSTメンバーに調理師 食べたい・食べやすい病院食へ 香川・高松平和病院

 「もっと患者様の声を聞き、患者様一人ひとりにあった食事を提供したい」と、香川・高松平和病院のNST(栄養サポートチーム) には調理師が参加しています。食事の硬さや家庭での食事方法を聞き取り、調理の好みを工夫し、栄養状態の改善、満足度につなげています。香川医療生活協同 組合・看護部長の藤井幸代さんの報告です。

 高松平和病院では、〇五年一二月にNSTを結成しました。医師と看護師、栄養士、薬剤師、作業療法士、検査技師のほか、調理師が参加しています。
  以前から病棟では、患者様の病態に合う食事の硬さや水分量、経腸栄養の研究をしてきました。しかし食養科は、「忙しくて、どう対応したらいいか…」と。そ こで「患者様の食事の様子を見て、いっしょに考えよう」と、NSTへ参加を要請しました。

 〇六年四月、栄養管理実施加算を算定するため、検査科にアルブミン値三・〇以下の患者様の一覧表を出してもらいました。その結果、低栄養状態の患者様が予想よりはるかに多く、二週間に一度だった回診を毎週行うことになりました。
  チームでは、基礎疾患や検査データ、身長や体重から基礎エネルギー量を、活動指数やストレス指数から必要エネルギー量を計算し、回診前にNSTパスを作成 します。またカルテの検査データなどから、現在の問題点を確認。適切な栄養方法やエネルギー量、必要な投薬などをカルテに記載し、主治医へ報告します。

一人ひとりの違いを実感して

 回診では、食事中の患者様の様子を見て、食事の硬さや形状が適切か作業療法士などが確認します。そして食べやすい硬さや食品は何か、栄養士や調理師と相談します。
  ある高齢患者様の食欲が落ちているという報告でチーム回診をしました。食べられない原因を家族に聞くと、「家では家族と同じものをミキサーにかけて食べて いた」ということが分かりました。そこで一般食を調理師がミキサーにかけて出すことにしました。その結果、患者様に食欲が戻りました。NSTに参加してい る調理師・大西浩未さんは、「から揚げやおすしなどをミキサーにかけて食べてもらうという発想はなかった」と驚き、一人ひとり食べ方や食べやすい食材や方 法が違うことを実感しました。
  そのほか「一口大のおにぎり」や「もう少しドロドロしたおじや」など、患者様の「食べやすい」や「食べたい」という要望にも積極的に対応できるようになりました。
  今後もこの体制でNSTを続け、栄養状態の改善や患者様の満足度アップにつなげたいと思います。


 

NSTに参加して
調理師・大西浩未さん

  患者様の食事をつくることだけが調理師の仕事だと考えていた時は、なぜ絶食の患者様が多いのかも分かりませんでした。
  NSTでは最初、医師や看護師の会話を聞くだけで精一杯でした。しかし、患者様の食事に立ち会い、作業療法士さんから話を聞き、「なぜそれが必要なのか」、考えることを学びました。
  患者様やその家族からの要望に応え、食事づくりのプロとして、患者様一人ひとりに合った食事を提供していきたいと思います。

(民医連新聞 第1393号 2006年12月4日)

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