民医連新聞

2006年12月4日

記者の駆け歩きレポート(8) 管理型施設めざして歯科臨床研修まっただ中 群馬・利根歯科診療所

 二〇〇六年四月から、歯科医師も卒後一年間の臨床研修が義務化されました。民医連では四カ所が単独型・管理型で、一六カ所が協力 型で研修施設の指定を受け、一九人の研修医を受け入れました。利根歯科診療所は、新潟大学医歯学総合病院の協力型研修施設として、三カ月間ずつ、三人の研 修医を受け入れています。 
(川村淳二記者)

 群馬県の沼田駅からほど近い利根歯科診療所。待合室を抜けた中庭を挟んで東西に大きな診察室が 二つあります。それぞれ六台の治療イスがゆったり二列・計二四台が並びます。待合室と診察室の間にはレントゲン室、奥には技工室がある大規模施設です。歯 科医師一〇人、歯科衛生士一五人が四チームに分かれ、グループ制で診療をしています。
  診察室では、三人の歯科医師と三~四人の歯科衛生士が忙しそうに働いていました。研修医の早川順満(よりみつ)さんは、四月から新潟大学医歯学総合病院で 研修を始め、九~一一月の三カ月間、当歯科で研修しました。

多職種といっしょに

 「大学も患者さんにすごく丁寧です。ここはスタッフと患者さんの距離がもっと近い。指導医は僕にも患者さんにも、親切に教えてくれます」と早川さん。二一年目のベテラン指導医の中沢桂一郎さん、三年目の駒形雄気さんと、三~四人の衛生士さんのグループで診療しています。
  最初は戸惑った早川さんも、今では「衛生士さんとの連携もいいし、技工士さんは義歯などの具合をチェックしてくれる。すごく円滑です」といい、毎月の研修評価にも多職種が参加します。

患者に密着した研修

 「歯科の技術は、患者さんに処置をしながら習得するしかありません。患者さんの状態と研修医の 力量を絶えず確認しながら指導するには、グループ制が有効」と、中沢さんは指導医の立場から話します。「一年目の先生がどの辺でつまずくかよく分かるの で、しっかりフォローしたい」と駒形さん。ベテランと若手の重層的な指導体制がつくられています。新潟出身の駒形さんは、新潟民医連に歯科を立ち上げたい と研修しています。
  早川さんは、利根歯科の「歯科医師としての心構えや人間性も伝えたい」という呼びかけに共感し、ここを選びました。研修プログラムの中に院所利用委員会や 班会の参加が組まれています。早川さんも二回ほど班会に参加し、歯周病の話をしました。「大学でも開業医でも、歯科医師が患者さんのところに出向いて、歯 科医療の話をすることはまずないと思う。地域に根ざした歯科医療ってどんなものか興味があった」といいます。
  早川さんの悩みは、利根歯科は大学に比べ症例数が圧倒的に多いのに、自分の技術が未熟で十分にこなすスピードがないことです。「三カ月でなくもっと長くい たかった。でもここで研修できて本当によかった。後輩にもぜひすすめたい」といいます。

人を育てることが伝統

 「後継者育成と地域活動は利根の組織文化」と、原田富夫所長はいいます。一九八二年に開設して からすぐに歯学生委員会を立ち上げ、新人歯科医師を受け入れ、二年間の独自の研修を実践してきました。一九人の歯科医師が研修し、県連内で一一人が民医連 の歯科をささえています。「組合員さんに説得され、ここに残る決意をした歯科医師も多い」といいます。
  共同組織も当たり前の存在です。共同組織月間では、歯科医師も地域を回り、出資金の増額などを訴えています。
  二年後には実績を積み、管理型施設になることをめざしています。

(民医連新聞 第1393号 2006年12月4日)

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