民医連新聞

2009年7月6日

フォーカス 私たちの実践 訪問介護の安全性高める 長野・ヘルパーステーションにじ 「アッとハッと報告書」を活用 ヘルパー会議でイメージトレーニング

 訪問介護での安全性を高めようと「アッとハッと報告書」を集約し、学習や検討にとりくんでいる長野・ヘルパーステーション「にじ」。第九回看護介護活動研究交流集会で介護福祉士・西山澄子さんが報告しました。

 当ステーションは、ヘルパー三〇人(うちサービス提供責任者三人)で月平均一七〇〇回の訪問介護を行っています。
 〇七年四月に、法人(東信医療生協)の安全対策委員会に参加し、とくに委員会に報告することもなく二カ月が過ぎたとき、入浴介助中に利用者が尻もちをつき、脇腹を痛めるという事故が発生しました。それをきっかけに、訪問介護での安全対策を見直しました。

「アッとハッと」を集める

shinbun_1455_01 訪問介護中の事故では身体や精神、経済的な損失を受けます。事故を未然に防ぐために、普段から警鐘事例や自分たちの「アッとハッと事例」を検討し、原因や対応方法をイメージトレーニングしておくことが大切と考えました。
 そこで、まず「アッとハッと報告書」の集約を強めました。報告用紙に「事故の種類・レベル」欄を設け、報告書を書く意義について確認しました。報告書は 月報で、ヘルパー会議と安全対策委員会に報告することにしました。
 またヘルパー会議では、時間を取って、委員会の「医療安全情報」や新聞記事に載った警鐘事例を読み合わせるようにしました。たとえば、入浴介助での熱 傷、ベッド柵や食物での窒息、陰部洗浄時の大腿骨骨折などです。事例をもとにグループワークで意見交換もしました。
 「アッとハッと報告書」は、その意味と内容について確認し合った六月以降、報告件数が増えてきました(グラフ)。内容は「道路混雑で一〇分遅刻」「腕時計したまま身体介護を行った」「処置内容の連絡もれ」などがあります。とくに「訪問できなかった(落ち)」「時間の間違い」などが月平均三件あり、ステーション全体で改善にとりくみました。

報告の意味「わかった」

 ヘルパー会議でのグループワークは「勉強になった」「またやりたい」など好評です。また、「アッとハッと報告」の読み合わせができない月が続くと、報告数が減る傾向があり、続けることの大切さがわかりました。
 〇八年一月、ヘルパーにアンケートをとりました。その結果、「アッとハッと報告書」を書く意義について、全員が「わかった」と回答しました。また、「訪 問の落ち」をなくすために、各自が模索し努力していることもわかりました。アンケート実施自体も、安全を意識づける効果があり、お互いに情報交換がされる ようになりました。
 「気づき」には個人差があり、訪問先でのサービス内容が利用者によって違うため、報告の内容があいまいになりやすい面があります。また「アッとハッと報 告書」を出すと、「介護技術が未熟と判断されるのではないか」とマイナスに捉える傾向もあると考えられます。

「個人の問題」にしない

 「人はミスをする。でもミスは個人の問題ではなくステーション全体の問題」という理解をはかり、報告しやすい雰囲気づくりを心がけ、まずは情報を集約することが大切です。そこから気づき、改善がすすみます。
 「アッとハッと事例」をもとに、どんな状況で起きたのかを全職員で分析し、対策を話し合うことで職員の直観力・想像力を高め、安全文化がつくられると思います。その後、受診が必要な身体事故は起きていません。

(民医連新聞 第1455号 2009年7月6日)

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