民医連新聞

2009年6月1日

医師研修制度の「改変」「凍結させる」運動を ……緊急に医師委員長会議ひらく

 医師臨床研修制度の「改変案」について、一二四一通の意見(パブリックコメント)が出されました。多くは反対意見です。しかし、 それを無視したかのように、厚生労働省はそのままの内容で省令を施行・公布しました(四月二八日)。全日本民医連は五月一六日、緊急の医師委員長会議を開 き、今後のたたかいと対応について意思統一しました。四五県連から一一〇人(うち医師四五人)が参加し、各地のとりくみや行政の動きなど情報交換しまし た。

道理ない「改変」

 改変の主な問題点は、(1)必修科目を減らすなど研修プログラムの「弾力化」、(2)都道府県に枠を設け研修定員を削減する、(3)研修病院から中小病院を排除する、などです。
 全日本民医連の藤末衛副会長は、この本質を「医師増やせの大運動で、国は増員へ転換を迫られたが、社会保障・教育の公費負担を抑制する方針を変えない。 その中で起きた逆流だ」と指摘。「道理のない省令を実質凍結させる運動と、民医連の良さを発揮する医師研修」を呼びかけました。

背景に社会保障と教育予算減が

 「改変」を求める大学病院の「危機感」の背景に、大学予算が毎年一%削減され、病院の採算が大学自体の存亡に直結するという事情があります。藤末副会長 は「対立ではなく、共闘して、医学教育と臨床研修の充実のために社会保障・教育予算の増額を求めよう」とのべ、以下の基本的な対応を提起しました。
 第一に「定員数の削減や研修病院の指定取り消しに、原則として応じない」ことです。基幹型研修病院の基準を満たさなくても、「省令の施行についての通 知」では「地域の実情や研修医の受入実績等を充分に考慮して、指定の取り消しを行うかどうか決める」となっています。都道府県に働きかけ「地域医療を守 る」立場で判断を求めることができます。
 第二に「研修の目標と到達にこだわったプログラムを提出すること」。中小病院であっても良い研修を実施し、地域で働く医師を育てていることを明示する必要があります。秋に行われる臨床研修交流会で「中小病院での初期研修の成果」をまとめる予定です。
 第三は、奨学生活動を強め、医学生にアピールし、後期研修も含め研修医の受け入れ実績をつくることです。貧困に立ち向かい、地域医療の再生に貢献している民医連の理念と役割を打ち出すことが重要です。

徹底してたたかう

 指定報告を六県(北海道・東京・石川・奈良・高知・鹿児島)から受け、情報や意見を交換しました。
 「いま徹底してたたかわないと、いずれ中小病院の切り捨てなどが打ち出される」「大学や自治体病院と懇談し共感が得られた」「自由な研修を妨げ大学に縛 る改変だ。医学生にもっと知らせなくては」「自県で研修したい学生の希望を奪ってはならない」など、情勢認識とたたかいの方向を共有しました。
 医師養成委員長・山本一視さん、医学生委員長・柳沢深志さん、ドクターウエーブ事務局長・増田剛さんも運動の強化について発言。参加者は今後も情報を集め、共有することを申し合わせました。

(民医連新聞 第1453号 2009年6月1日)

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