民医連新聞

2009年3月2日

駆け歩きレポート(30) “応益負担”は違憲 障害者が集団提訴 「自立支援法やめよ」

 〇六年四月に施行された障害者自立支援法。支払い能力に応じた「応能負担」から、すべての福祉サービスに原則一割負担を課す「応 益負担」に変わりました。障害者の猛反対で、軽減策も出ていますが、重い負担や「応益」は変わりません。それに対し、障害者二九人が同法の廃止などを求 め、全国八地裁に提訴。第一回口頭弁論を終えた大阪訴訟の原告団に「提訴を決意した思い」を聞きました。(横山 健記者)

 二月一〇日、大阪地方裁判所には、多くの支援者が傍聴券を求めて並びました。第一回の口頭弁論では、弁護団や原告が障害者自立支援法の問題点を鋭く指摘、「私たち障害者が生きることにお金をとるのか」と訴えました。
 その後の報告集会には、第一次原告と第二次提訴の予定者、支援者二〇〇人が集まりました。

重度ほど負担は重く

 重度障害のある氷高(ひだか)萌さん(二〇代)の母、てる子さん(原告代理)が、提訴した理由と思いを語りました。
 娘は、意思表示もうまくできないけれど、外出が好き。障害のある子が「外出したい」と思うのは、ぜいたくなことでしょうか。
 応益負担は、重度になるほど負担が大きくなります。だから、利用を減らすしかありません。
 娘の収入は月六~七万円の障害者年金のみ。いまは私や夫がいるので生活できますが、どちらかが倒れたら…。こんな制度は、国から「障害者は家から出ず、早く死ね」と言われているようです。
 原告になれるのは、まだ生活ができている人。原告になれないたくさんの人たちのためにも、娘や障害者の今後を国に問いたいと思います。

20年前に逆もどりだ

 原告の金澤秞(ゆうこ)さん(六〇代)には介護保険法が適用され、保険料の負担がのしかかっています。
 金澤さんは「障害者は就労差別を受け、低賃金で働いている。年金額も少なく、月数千円の介護保険料も重い負担になる。『長生きするな』ということやね。 この法律で、障害者福祉は二〇年前に逆戻りした。もう政治から変えないとアカン」と力強く語りました。

障害者を閉じこめる

 障害者に一割負担を課す「障害者自立支援法」の成立は、自民・公明与党が強行したもの。名前は「自立支援」でも実態は、障害者がサービスを奪われ、「自立を阻害」されています。これまで負担がなかった障害者も一割負担させられ、生活を圧迫しています。
 また政府は、外出時の付き添いヘルパー事業を自治体に移管。自治体も財源が確保できないため、事業を縮小した結果、障害者の利用時間が大幅に減らされました。
 視覚障害のある原告は「付き添いも月九九時間から五〇時間に減らされた。外出は通院などの必要最低限のものになり、閉じこもりがちになった」と語りました。

人権は金で買うものじゃない

 全国弁護団は、八つの地裁でそれぞれ、障害者自立支援法が憲法一三条(幸福追求権)や一四条(法の下の平等)、二五条(生存権)に違反している、と訴えています。
 訴訟弁護団事務局長の藤岡毅弁護士は「この法律は『障害者が障害を持ちながらも、その人らしく生きること』を『サービスを利用すること』に変えてしまっ た。基本的人権は、お金で買うものではない。当たり前なことが決定的に欠けている法律。近い将来に『こんなバカな法律もあったんだ』という時代になる」と 語りました。
 支援者たちも「大阪人らしく、明るくたたかおう」と応じました。
 次回の公判は四月の予定です。

(民医連新聞 第1447号 2009年3月2日)

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