民医連新聞

2009年3月2日

“メタボ健診”改善求め活用を 保健予防活動推進責任者会議ひらく 協会けんぽ、友の会健診、がん検診など、あらゆる手を尽そう

  特定健診・特定保健指導(メタボ健診)が始まって一年。実施責任が自治体から各健康保険者に移ったため、ガンや他の病気の健診が後退し、受診場所がない、 など混乱や問題が起きています。民医連の事業所でも健診件数が大幅に減少。経営上も、住民の健康上も大問題です。二月七日、全日本民医連は東京で保健予防 活動推進責任者会議を開き、対策を意思統一しました。三一県連、一二四人が参加、四事業所が指定発言しました。(村田洋一記者)

【問題提起】

“健康権”獲得の視点で

田村昭彦 保健予防・労働者健康問題委員長

 「医療費を二兆円減らす」、これがメタボ健診の本当の目的でした。「健康の自己責任論」が強く流され、健診分野に営利企業が参入しました。
 産業衛生学会や公衆衛生学会のシンポジウムでは「メタボ判定基準は疑問」「保健指導を評価する研究はない」「国保加入者の受診率が低迷」「がん検診との連携がよくない」などが指摘されました。
 二〇一三年以降、受診率目標(国保六五%、協会けんぽ等七〇%、単一組合健保八〇%)の達成度により後期高齢者医療支援金の負担が加減算され、組合健保の「一人勝ち」で格差がいっそう広がると予想されています。
 民医連で健診件数が減少している困難の原因は、(1)同じ地域に住んでいても保険者が違うと、健診内容、料金、請求先がバラバラ。地域や班ごとの健診が 組織しにくい、(2)住民への周知や事業所と保険者の集合契約の遅れ、社会保険の被扶養者は事前申請など手続きの複雑さ、自己負担が高い、(3)特定健診 の減少に連動してがん検診が減少したなどです。
 全日本民医連は昨年九月の方針で、(1)地域や職場に新たなつながりを広げること、(2)自治体に健診を後退させないよう働きかけることを提起しまし た。今後は、明確になった問題点から制度改善の要求をまとめていきます(上の表)。
 また、制度に左右されない民医連らしい総合的な保健予防活動の方針を明確にすることが必要です。そこでは、(1)貧困・格差拡大の中で「反貧困ネット」 「青年ユニオン」や社保協などと協力し、保健予防活動を大きく展開していく、(2)メタボ健診は後期高齢者医療制度の改廃まで続くので、限界はあるが活用 を考えること。協会けんぽの「生活習慣病予防健診実施機関」になり、中小零細企業の健診を増やすことや班会を特定保健指導として認めさせるなど工夫する、 (3)がん検診や肝炎対策、予防接種、歯科健診などを国と自治体の責任で充実させる、などの視点が必要です。
 WHOが提唱する「健康の社会的決定要因=THE SOLID FACTS(ソリッド・ファクト)」には、社会経済格差、ストレス、孤立・ホームレス、 失業・不安定雇用、社会連帯・地域のささえあいなどが含まれます。保健予防活動は、「健康権」獲得のたたかいでもあります。民医連の総合的保健予防活動を 力を合わせて推進しましょう。

 特定健診・特定保健指導制度に関する改善要求案として以下の5点が提起された

(1)「誰でも手軽に受診できる」制度の改善
(2)がん検診などの充実と健診の充実を地方自治体に求める運動を起こす
(3)「協会けんぽ生活習慣病予防健診受託医療機関」の拡充を求める。
(4)電子請求ソフトの不備の改善要求。
(5)特定保健指導支援計画を、-定の経験と教育を受けた臨床看護師も可能にすること。

市と交渉 出張健診が実現

福岡・米の山病院 斉田隆幸(健診増進課課長)

 八女(やめ)民商健診を実施してきた生協クリニック(くるめ医療生協)は医師会未加入のため県 集合契約(医師会などと医療保険者グループの代表が委託契約を結ぶ)に参加できませんでした。そのため健診が困難となり、八女市と交渉。結果は「県の集合 契約医療機関であれば八女市に出張健診が可能で個別健診として取り扱う」との回答でした。
 そこで、大牟田市にある当院健診センターが依頼を受け、〇八年度は八女市保健センターを会場に八女民商の出張健診を実施することになりました。同様に民 商会員がいる隣の筑後市にも申し入れ、特定健診の制度を活用した出張健診を実施することができました。
 福岡県内でも出張健診を個別健診として認めるところはまだ少ないので、今後は八女民商会員が在住する他の市町村でも実施できるよう運動していきます。

大腸がん検診が委託に

北海道・帯広病院 片桐正晃(事務長)

 〇二年から〇七年までに保健予防収益は約二〇〇〇万円から四二〇〇万円、収益率では三・二%か ら六・四%へそれぞれ倍加させました。自治体健診数も約五〇〇件から一六五五件と三倍化。これは自治体や友の会に対する働きかけを強化した結果です。友の 会会員や今まで健診を受けた人にハガキや電話かけでお誘いしています(専任の健診担当者は置いていません)。こうした七年間の実績が、特定健診によって〇 八年度は減少に転じる見通しです。
 友の会会員健診充実のため、当法人では創立二〇周年記念の企画として二〇〇六年、四〇歳以上の友の会会員に無料で大腸がん検診(二回法)を実施してきま した。二万人を超える対象者すべてに容器を届け、約四五〇〇人の会員が検査を受け、一三人にガンが発見されました。大きな成果を得て〇七年、〇八年と三年 間継続して行ってきました。
 私たちの運動に連動するかのように帯広市では、大腸がん検診を〇九年度から医療機関に委託することになりました。今後は市の健診として実施できるようになりました。
 これからも、受けやすく内容の充実した健診にしていくために友の会員・住民の皆さんと力を合わせて改善していくとともに自治体への働きかけを強めていきます。

5万件の電話でお誘い

大阪・医療生協かわち野 吉田 満(組織部長)

 医療生協かわち野では『いつでも元気』一月号で紹介されたように出張健診や日曜日の健診・半日 人間ドックを旺盛に行っています。五万人電話作戦で二万人以上を健診に誘い、組合員健診紹介カードなどで大きな実績をつくってきました。協会けんぽの受託 医療機関にもなり、事業所健診も増やし、一月までに昨年比で一五八一人、一一七%増やしています。しかし、健診収入は前年比八九%の見通しです。
 経営的にはたいへんですが、組合員、職員が一体となり、どんな制度でも改善のたたかいを不屈にすすめ、健康な社会をめざします。

全事業所が協会けんぽ受託

埼玉協同病院 小池昭夫(健康増進センター長)

 当法人では、四~一二月期で約三万件あった基本健診が、特定健診では一万件強まで減少しました(前年対比三八・四%)。
 対策としては、協会けんぽ生活習慣病予防健診の実施資格を全事業所に広げ(以前は三カ所)、メール便・電話・訪問などで働きかけました。巡回健診を引き 受ける事業所も増やし、埼玉協同病院のバックアップで実施しました。新たな組合健保との契約もすすめました。
 被扶養者が伸びない理由は、有料や受診券などのかかりにくさです。健診内容も薄く「国保ドック」や生協組合員健診でカバーする必要もあります。引き続き働きかけを強め、目標に向かって奮闘していきます。

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(民医連新聞 第1447号 2009年3月2日)

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