民医連新聞

2002年5月21日

いのちと人権まもれ たたかう列島 介護のネットワーク “介護心中事件2度と起こさない” 町ぐるみの「シルバーネットワーク」が発足

民医連の支援センターのよびかけで動いた長野・下諏訪町

 長野・下諏訪町では、介護心中事件の発生をきっかけに、民医連の下諏訪町在宅介護支援センターが呼びかけ、行政や民生委員もまきこんだ町の「下諏訪町シルバーネットワーク」が設立されました。同センターの鮎沢ゆかり相談員にききました。

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 2001年8月、長野県下諏訪町で介護心中事件が発生しました。妻(84)を介護していた夫(76)が残した遺 書には「五年の介護で疲れた。いっしょに死ぬ」と、書かれてありました。とりかえしのつかない、重大な結果となってしまったことに、誰もが人ごとではない という思いでした。 翌月、町内ケアマネジャー連絡会の定例会議で、直接担当していたケアマネジャーの報告も受け、この事件の事例検討会を実施。
 「困難事例はどのケアマネも抱えているが、専門外の問題の判断ができない」、「介護保険の導入で、これまでこのケースに関わっていた医療スタッフとのつ ながりが途切れた」、「医療と福祉の連携が重要との認識が薄かった」、「ケアマネジャーが把握していない人(民生委員、町会議員、近所の住民)がかかわっ ていた」などの問題点がありました。
 またこの事件後も、孤独死が2件続けて発生。今回の事件に限らず、地域の民生委員をはじめとする他機関同士のむすびつきや情報共有が弱く、地域の高齢者をフォローする体制ができていませんでした。
 そこで、町内3つの在宅支援センターと保健センターで開いている連絡会で、ネットワークの整備を提案しました。下諏訪町は人口2万5000人のうち 23%、約2500人が75歳以上の高齢者です。「この2500人を網羅しよう」という呼びかけは、会議に出席している町福祉課の担当者も含め、積極的に 受け止められました。

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 以後相談を重ね、介護支援センター連絡会が主宰する形で、下諏訪町シルバーネットワークがたちあがりました。町福祉課、民生委員、保健センターが参加。
 ネットワークとして、当面緊急に目配りが必要な世帯として?「独居世帯」、?「高齢者世帯」、?「介護認定を受けているが、サービスを全く利用していな い世帯」の3つを挙げました。今年一月から、?に該当する30数世帯へ、3つの支援センター(町立1、民間2)で手分けして訪問しました。
 なかには、家族で介護できるから、と積極的にサービスを受けていなかったところもありましたが、「サービス利用の方法や相談先がわからなかった」などの 声が目立ちました。今回の訪問で介護サービスの利用を始めた世帯も出ています。今後も三カ月に一度、対象世帯の訪問を継続することにしています。
 行政の動きも活発になりました。昨年11月から「65歳以上」「障害者」全員を対象に民生委員がアンケート調査を実施。また、行政が主軸で情報をオンライン化し、情報共有をはかる準備がすすんでいます。

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 事件から半年、町の高齢者を見守るネットワークづくりを提案した側の私たちでさえ、ここまで積極的な動きを起こせるとは予測できませんでした。残る「独居」「高齢者」世帯の訪問にも民生委員や保健婦と協力して挑戦します。

(民医連新聞2002年05月21日/1276号)

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