民医連新聞

2006年5月1日

フォーカス医療・福祉の実践(1) 多職種の力を借りてソフト食導入に挑戦 岩手・川久保病院 栄養科

摂食・嚥(えんげ)障害の患者さんに提供する食事は、きざみ食に変わってソフト食が注目されています。誤嚥などの危険性が少ないほか、数かずの利点があるからです。そこでソフト食の試行をはじめた川久保病院の栄養士、圃(はたけだ)昌子さんの報告です。

きざみ食からソフト食へ

 摂食・嚥下障害の患者さんには、これまで、きざみ食が提供されていました。しかし、問題点が指摘されるようにも なりました。(一)見た目が悪く、おいしくない、(二)ボロボロこぼれるなど衛生上に問題あり、(三)一度きざみ食になると常食に戻りにくい、(四)口の 中に残りやすく、誤嚥性肺炎などの危険性がある、(五)タンパク質やエネルギー量の摂取が減りやすく、低栄養状態になるリスクがある、の五点です。

 そこで、きざみ食の欠点を補う食事として、ソフト食が提起されています。ソフト食は、舌で押しつぶせる程度の硬 さ(やわらかさ)であること、すでに食べやすい食塊(噛んで飲み込む寸前の状態)になっていること、滑りがよく、スムーズに飲み込みやすいこと、がポイン トです。

 栄養科では、二〇〇四年一一月に新病院が完成し、各病棟に岩手山を望む食堂が設けられたことを期に、「患者さんに喜んでもらえる食事を」と、ソフト食の導入を検討しました。

 まず栄養士が、患者さん一人ひとりを訪問し、栄養アセスメントを行いました。その結果をもとに一週間のソフト食献立をつくり、試行しました。看護師や理学療法士などにも評価してもらうこととし、食事の時間に、栄養士が食堂へ行き、患者さんの様子を観察しました。

一人ひとりに合う献立

 一週間の試行のあと、他職種から次のような率直な評価をもらいました。「食材をやわらかく、まとまりやすいものにしては」、「食べにくいから嫌い、という患者さんも。好みに合わない場合もある」、「患者さん一人ひとりに合っていないのでは」などでした。

 栄養科でも、「患者さんによって咀(そ)嚼(しゃく)や嚥下障害に差があるので、ソフト食であれば同じでいい、 というわけにはいかない」という認識に。また今回、いろいろな献立をつくったため、調理スタッフの負担もたいへんなものでした。「一人ひとりに合ったソフ ト食を実施するには、調理作業を効率化しなければ」などの意見も出ました。

 このとりくみの中で、栄養士が食堂に出向いたことが好評でした。献立が見えづらい患者さんにメニューを説明すると、たいへん喜んでもらえました。これからの栄養科に求められる課題の一つだと思います。

 その後もさまざまな検討を積み重ね、七月にソフト食を開始しました。まだ、水分でむせたり、少量でいかに必要量 の栄養を摂ってもらうか、など課題はあります。献立に既製食を利用するなど、調理スタッフの負担軽減もはかっています。毎日、献立会議を行い、調理法を検 討しています。

 二〇〇五年四月から、言語聴覚士さんを加え、摂食嚥下委員会を発足しました。医師がレントゲン透視下で嚥下評価し、食事形態の指示も行えるようになりました。

 これからも委員会とも検討を重ね、一人ひとりの患者さんに合った、食事を提供していきたいと思います。

(民医連新聞 第1379号 2006年5月1日)

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