民医連新聞

2008年5月5日

ねらいは「生活保護切り下げ」 ―通院移送費廃止の撤回求め記者会見― “領収書は捨てず移送費を申請しよう”

 厚生労働省は、生活保護の通院移送費の原則廃止を決定しました。実質「保護基準の引き下げ」で、受給者から不安の声があがっています。三月に通知し、四月から実施という乱暴さ。諸団体の抗議で六月までの「是正期間」を設けましたが、受診を妨げ、命を脅かす大問題です。

あいまいな基準

 厚労省は、滝沢市の生活保護不正受給事件(*)を受け「移送費の適正化」を名目に「原則廃止」 を決定しました。通院移送費は、生活保護受給者の通院に必要な最低限の交通費を保障してきたものです。今回の改悪に厚労省は「通院移送費は、もともと生活 扶助に含まれる。保護費の中から一〇〇〇~二〇〇〇円ぐらいは払える」と説明します。
 この改悪に対し四月二一日、生活保護問題対策全国会議や全生連、自立生活サポートセンターもやい、全日本民医連など、一二団体が共同記者会見を開き「撤回」を訴えました。
 厚生労働省は、移送費の対象要件を「へき地からの通院」「高額な通院費がかかる場合」に制限。しかし具体的に「どこからがへき地なのか」「いくら以上が 高額なのか」は、「各市町村が判断を」として、基準を示しませんでした。
 また、医療機関にかかっている受給者に「ジェネリック医薬品に切り替えを。使わない場合は、保護打ち切りを検討する」という通知も出しています。

受給者は死活問題

 会見では、区役所の現役ケースワーカーが発言。「受給者には精神疾患をかかえた人も多い。医師 との相性や近所の目などで、自宅近くの医療機関に行けるとは限らない。毎日、電話で不安の声が寄せられている」「受給者にとって一〇〇〇円は一日分の食 費。一日食べずに医療機関にかかれ、というのか」と批判。
 厚労省のあいまいな基準や受給者の実情を無視した「Q&A」文書には、受給者を医療にかからせないという意図があからさまに出ています。また、基準の引き下げは、最低賃金や年金などにも影響します。

命を値切る行政

 自立支援センターもやい事務局長の湯浅誠さんは「狙いは、生活保護の実質的な引き下げと医療費 の抑制。まさに命を値切る行政だ。なりふり構わない厚労省のやり方に恐ろしさを感じる。実態を知らせ、通院にかかった領収書は捨てず、移送費を申請しよ う。却下されたら不服審査請求を出そう」と呼びかけました。
 すでに東京都小金井市や大阪府堺市などでは、受給者に「支給廃止」通知を送っています。最後に「あきらめず交渉を続け、運動を広げて通知を撤回させよう」と力強く訴えました。


(*)滝川市生活保護不正受給事件…北海道滝沢市で生活保護受給していた夫妻が、介護タクシー会社と共謀し、二〇〇六~〇七年の一年間で二億円以上の通院移送費などをだまし取った疑い。夫妻とタクシー会社社長と社員が逮捕されています。

生活保護基準が下がれば この制度にも影響が!

◇最低賃金
◇老齢基礎年金
◇住民税の課税基準
◇国民健康保険の保険税・料と医療費の減免制度
◇介護保険料
◇障害者の医療費の減免制度
◇公営住宅家賃の減免制度
◇住民税や固定資産税の減免制度

(民医連新聞 第1427号 2008年5月5日)

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