民医連新聞

2005年12月5日

保険薬局が奮闘中 患者さんの薬代を安く 国保・生保も相談のります 静岡・ことぶき薬局

 「医療費の負担が重いという理由で、治療をあきらめる患者さんを出したくない」と、静岡健康企画・ことぶき薬局では、薬剤師を先頭に、とり くんでいます。薬剤費が高額な患者さんからアンケートをとり、ジェネリック薬※の使用や、負担の軽減を検討しました。さらに、生計が苦しく、治療を中断せ ざるをえない患者さん、未収金が膨らんだ患者さんには生活保護申請や国保法四四条の利用を援助をしています。(木下直子記者)

 発端は、薬局の向かいにある三島共立病院の医師が来て、「ジェネリック薬を使って、窓口負担を軽くしようよ」と、相談をもちかけたことでした。ここ数 年、格段に重くなった患者の医療費負担を少しでも軽く、と考えたのです。

 「すぐに検討し、導入しました。先発品と後発品とでは、ずいぶん窓口負担が軽くできるのです。意識的に導入してからは、患者さんの窓口負担そのものが気になりだして」と、法人の代表取締役の吉岡優子さんは振り返ります。

 毎月五〇〇〇円以上の薬剤費を支払っている患者さんからアンケートをとり、その結果(別項)にまた驚きました。「思った以上に、患者さんは困っている」。

ジェネリック薬を積極的に

 寄せられた声には、薬局全体で対応。「安い薬に変えたい」と、答えた四七%の人たちには、治療上の支障はない か、主治医と相談しながら、ジェネリック薬への変更や、処方量を減らすなどの調整をし、一二人(三〇%)の負担を軽くしました。高額療養費などの「各種制 度を知りたい」という人には、事務職員が説明や、資料の郵送を担当。「助かった」という患者さんと喜びあいながら、今度は代替のない薬剤を使っている人 や、中断、未収金の患者さんに目が向きました。

患者さんの生活背景知って

 薬剤師の濱口祥子さんは、未収金が三万円を超えていた患者さんに声をかけました。ぜん息ですが、発作を起こして やっと受診・来局する、ということを繰り返していた人です。多重債務と、体調不良で就業できない夫がいるなど、家庭が困難でした。病院SWや市議の手も借 り、援助しました。夫は検査で特定疾患だったことが判明。生活保護も受給できるように。

 定期受診できない糖尿病患者さんもいました。インシュリンは、安い薬に変えられません。切れると命に関わること も。「未収金の取り立てではないから」と伝え、やっと連絡がつくと、家族が入院し、本人の医療費まで出せない事情が判明。「国保法四四条」※を申請してみ ることに。K町で初の申請者で、町の広報でも制度の紹介記事が載りました。現在「町で第一号の利用者になろう」と、手続き中です。

 米澤由希子さんも相談に関わりました。民間病院から転職し、二年目になる薬剤師です。医療費を軽くしたい、とい う糖尿病の患者さんでした。脳梗塞で倒れて働けないところに、会社が倒産し、借金がありました。事務職員とともに自己破産と生保受給の手続き、インシュリ ンの手技や、睡眠薬の適正な服用などを援助しました。意思疎通の難しさもありますが、何かあれば、ことぶき薬局を頼りにしてくれています。

「ウチら、がんばってるじゃん」

 このことは先の全国学術運動交流集会でも米澤さんが発表しました。反響は「すごい! 私の事業所に話しにきて」 と、声がかかるほど。「私の職場は患者さんを楽にするために、動いているという実感があります。ウチら、がんばってるんじゃん、って思えて、うれしかっ た」と米澤さん。「時間とエネルギーはいるけど、薬剤師でもここまで患者さんに関われた。気になった患者さんをどうしたらいいか、いっしょに考えられる先 輩たちがいるのも、良かった」。「薬を手渡す短い時間や、処方箋では分からないことまで知れたね」と、濱口さん。吉岡さんは「気付けばジェネリック薬の使 用率があがって、二割を超えてたの。ここらで一番かもしれない」。

 薬剤師に触発され、事務部門も、法人内の全ての薬局(四カ所)で国保の短期証の患者さんの実態把握と相談活動を始めたところです。


※ジェネリック薬(後発品)…一般的に新薬(先発品)の特許期間満了後(20~25年)に製造、販売される薬。研究開発や承認審査費用がいらない分、薬価は先発品の80~40%。

※国保法四四条…市町村が「特別の理由で支払いが困難」と認めれば、国保加入者に一部負担金が減免できるとした条項。特別の理由は、営業困難や失業、被災など(厚生省通達)。役所が認識していない場合もあり、積極的な制度活用が大切。

(民医連新聞 第1369号 2005年12月5日)

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