民医連新聞

2005年8月15日

10月スタート 改悪 介護保険法/たたかいと対応は? 林 泰則事務局次長にきく

 6月22日に成立した介護保険法「改悪」で、10月から施設等が受け取る介護報酬が減額され、それが「居住費・食費」負担として利用者にのしかか ります。「施設入所やサービス利用を断念する人を出さない」視点から、国と自治体に向けた運動を再構築し、減免制度などをもれなく使い、利用者負担額を極 力抑える努力が必要です。全日本民医連は、あらためて憲法25条にもとづく「あるべき介護」を求めてたたかおう、と呼びかけました。林泰則事務局次長(介 護福祉部)にききました。

改悪内容―
居住費・食費新たな自己負担年金では払えない

 改悪の最大のねらいは、介護保険の給付を抑制することです。一〇月に実施されるのは、「施設が受け取る介護報酬の削減」と「居住費・食費の自己負担化」。施設・事業所と利用者の双方を苦しめるものです。
 政府は、今回の居住費・食費の自己負担化にあたって、「在宅で生活する人との公平」「年金との調整」などと説明しました。「在宅にいても施設でも年金額 は同じなのに、施設入所者の居住費・食費が保険から給付されているのは不公平だ」というわけです。しかし、これは「住み・暮らす」のに十分な年金額を得て いない人が多数という現実を無視した論議ですし、老健や療養施設はもともと「居住」を想定している施設ではありません。このように今回の居住費・食費の自 己負担化は、そもそも矛盾に満ちたものであり、正当性も合理性もないものであることを改めて強調したいと思います。
 改悪によって、入所にかかる費用が年金額を上回る人が多数出ると予測されます。このことは厚生労働省も国会審議の中で認め、低所得者対策として「特定入 所者介護サービス費(補足給付)」を制度化しました。しかし、本人による申請が原則とされていたり、通所サービスの食費が対象外とされているなど、問題点 を含むものです。
 このように保険給付の対象が次つぎ縮小・制限され、保険料・利用料が高くなる現状では、介護保険は、社会保険制度としての体を成さなくなり、「介護の社 会化」どころか「家族介護の補完制度」になりかねません。このままでは、介護は社会保障から逸脱するばかりです。
 あらためて憲法二五条にもとづく高齢者福祉と、その一環の「介護保障」の公的責任を求めて、運動していきましょう。 

たたかい――
急いで自治体へ働きかけを

 重大なことは、実施二カ月前になっても細部の調整やガイドラインの作成が終わっておらず、拙速にスタートされようとしていることです。今後の情報にも注意する必要があります。
 改悪によって、施設入所が困難になる人が出るのは必至です。
 一人ひとりの実態・実情をもとに、国に低所得者対策の強化・改善を求めて働きかけを継続することが必要です。来年四月の介護報酬改定も視野に入れ、今改 定の欠陥を正し、制度の改善を求める運動をすすめましょう。
 自治体に対しては、国の低所得者対策を活用してもなお救済されない人への、実効性のある独自の減免制度を提案することが必要です。九月議会に向けた準備を急ぎましょう。
 たとえば、社会福祉法人の減免制度の公費負担分を増やし、対象者・対象サービスを拡大すること、社会福祉法人以外の施設とサービスに対しても実施させる ことも課題です。とくに、低所得者の補足給付がない通所サービスの食費の軽減は重要なテーマです。
 施設利用者の実態や自己負担化による影響を独自に調査し、国や自治体に制度改善について意見をあげましょう。地域の諸団体や老人施設などと共同することも大切です。

対応の視点―
サービス利用、あきらめる人を出さない!

 国や自治体に向けた様ざまな運動をすすめつつ、その上で、介護報酬から削減される居住費・食費の一定部分を実費として利用者に負担を求めなければなりません。
 利用者の負担を可能なかぎり軽くするために、国や自治体の低所得者対策や様ざまな社会資源をもれなく活用しきることが大切です。
 利用者一人ひとりの事情や地域の実態をふまえ、「経済的理由で施設入所やサービス利用を断念する人を一人も出さない」視点で、共同組織の方がたとも相談 をしながら、民医連らしく検討をすすめましょう。また、法人独自の減免制度をつくったり、地域助け合い基金の創設や活用を積極的にすすめましょう。

 今回の「たたかいと対応」を通じて、地域での民医連の存在意義をあらためて鮮明にし、利用者・家族のみなさん、地域とより深く結びつきましょう。利用者の人権を守りぬく私たちの実践は、今後の新たなたたかいの条件を切り開いていくと思います。

(民医連新聞 第1362号 2005年8月15日)

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