声明・見解

2013年8月23日

【声明2013.08.23】降圧薬「バルサルタン(ディオバン錠)」に関する現時点での対応(見解)

2013年8月23日
全日本民医連第19回理事会

 ノバルティスファーマ(本社スイス)が製造販売している降圧薬「バルサルタン(ディオバン錠)」に関する京都府立医科大学と東京慈恵医大で行われ た国内臨床試験(医師主導臨床研究)において,ノバルティス社員が身分を隠し研究論文の解析に関わり「データ改ざん」が行われたことや奨学寄付金の提供な どが広く報道されている。同じような試験は他に滋賀医科大学、千葉大学、名古屋大学で行われている。
 バルサルタンは、降圧薬としての効能は認められているが,血圧をさげるだけではなく,同効薬に比べて脳卒中や心筋梗塞などの「心血管イベント」のリスク を抑制するということで大きく販売を伸ばしてきた。(2012年日本国内販売は約1,000億円超)しかし今回,臨床試験が行われた2大学では,そのリス ク抑制効果において「バルサルタン」に有利な人為的なデータ操作が行われ,「心血管イベント」のリスク抑制効果についての結論に誤りがあると大学当局の謝 罪会見が行われている。
 今回のバルサルタンのデータ改ざんは,言うまでもなく大学や医学者,製薬企業として許されない反社会的行為であり,薬剤という重要な医療行為に直接かか わる製薬企業は,最も高い水準の倫理とコンプライアンスが求められるはずである。全日本民医連は会長声明で「KYOTOHEARTStudyデータ操作の 全容解明と日本臨床試験での論文不正の再発防止を強く訴える(7月23日)」を発表している。
 その後8月22日にノバルティス日本法人の部長2名が全日本民医連を来訪し謝罪と説明が直接行われた。その内容は「バルサルタンの5つの医師主導臨床試 験において,元社員が関わり,かつ研究論文への開示が適切に行われなかったことのお詫びであったが,データの不正操作や改ざんを指示した形跡はなく,デー タ改ざんについては現在検証委員会で調査が行われている。」というものであった。同効薬との差別化を図る目的で市販後調査が行われ,そのデータが改ざんさ れたということは一個人の問題ではなく,企業倫理モラルそのものが問われている中身であるとの認識は感じられなかった。
 一方このような事態のなかで,患者さんからは,率直な疑問・不安が出ており,各事業所には具体的な問合せも寄せられ,個々の医師の判断で変更などが行わ れている状況がある。いくつかの民医連の病院では,患者さんへの説明を前提にバルサルタンの変更,新規処方からの自粛,採用中止,ノバルティスファーマ (株)のMR活動の停止などが検討されている。民医連外では、採用中止を発表している病院も出ている。
 全日本民医連は8月5日,「降圧薬「バルサルタン(ディオバン錠)」に関する法人・病院等の議論と対応について(要請)」を発信し,早急に管理部や薬事 委員会,医局などで組織的な議論を行い,今後のノバルティスファーマ(株)やバルサルタンについての具体的な対応について早急に議論と方針を決定すること を要請した。一方で民医連の医療機関としての薬の採用のあり方や製薬企業との関係においてコンプライアンスも含めて問題はないかを改めて点検議論すること を要請した。その結果方針を出した県連や法人では多くは薬剤の変更や採用中止の処置がとられている。
 以上を踏まえて全日本民医連理事会として,以下の見解を表明する。

  1. 「バルサルタン(ディオバン錠)」の変更,採用中止を基本とするが,すでに各県連・法人の現場で組織的方針の合意が得られている場合はそれを尊重する。尚変更にあたってはアンジオテンシンII受容体拮抗薬以外の降圧薬への変更を含めて原則的に対応する。

  2. 組織的な方針を「法人・病院の見解と対応について」など院内に掲示して説明する。

  3. ノバルティスファーマ社へは,「ディオバン錠」以外の薬剤の採用中止やMR活動の停止など組織的な対応を行う。

  4. これまでの薬剤採用のあり方の再検討・見直しを行い,製薬メーカーとの関係も適正に行う。

  5. 県連・法人・病院・診療所での方針やその後の状況は,医療部で把握し検証委員会の報告状況に応じて方針を議論する。

以上

(PDF版)

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