民医連新聞

2005年3月21日

安全・安心の医療をもとめて(34) 宮城・長町病院

薬局が看護部に協力「安全の防波堤を高めよう」と

 安全な注射を行うために、各地で相互点検や学習などがすすめられています。宮城・長町病院(一五〇床)では、薬局が看護部に協力し、「安全の防波堤を高めよう」と、工夫しています。同院リスクマネージャの高橋ゆかり副看護師長からの寄稿です。

注射の安全へ現場の意識を高めたくて

 「静脈注射を行うときの看護師の安全意識を高めたい」というのが、私たちの課題でした。二〇〇二年九月、厚生労 働省が静脈注射の実施に関する解釈を変えた(静脈注射業務を「診療補助行為の範疇としてとりあつかう」)ことを契機に、当院では全日本民医連の資料をもと に検討を重ね、二〇〇三年末に、静脈注射マニュアルを作成しました。しかし、従来以上に意識が高まった、という実感は、なかなかもてませんでした。

 そんな中でも、注射事故のニュースは次つぎと聞こえてきました。病棟主任会議やヒヤリハット委員会が率先して「EBMに基づいた静脈注射をしよう」と努力することにしました。まずは、看護協会の静脈注射の研修を受講。そして院内で連続学習会を企画することにしました。
 学習会には毎回一四~一五人が参加。「解剖生理」「静脈注射の合併症とその対策」「静脈注射の手技」「薬剤の基礎知識と管理について」の内容で四回で す。注射という行為が多くの知識・技術の上に成り立っていることへの理解を深めることができました。

看護部門の連続学習会に参加した薬局が

 薬局は医療整備委員会を通じてこの学習会を知り、「ぜひ」と参加していました。また、当院で使っている薬剤につ いて、情報提供もしてくれました。「併用すると相乗効果のあるもの、抗ガン剤の性質、血管外に漏れると組織壊死を起こしてしまうものは何か」など。日ごろ 使っている薬剤の情報です。看護師たちの反応は高く、熱心に聴きました。
 その後薬局では、これらの学習内容をもとに、『看護の安全性を守るために(注射剤の化学的・物理的特徴)』というパンフレットをまとめました。配合変 化、pH変化に起因した疼痛。相乗効果、補液剤の性質(細胞毒性・血管作動薬・浸透圧)、赤血球に対する浸透圧の影響など、を紹介しています。

 また、これを機に「医療安全の防波堤を高くするために、今後も協力したい」と、積極的に「サテライトファーマシー」のとりくみをはじめました。

 それまで処方変更や臨時薬の追加などが発生した際は、ダムウェーターで薬剤を病棟に上げて看護師が配薬していま した。これを変えて、現在は各病棟担当の薬剤師が、定期処方日の配薬・服薬指導のほか、処方変更・臨時薬に関しても病棟まで足を運び、配薬・服薬指導・ セットを行っています。また、これまでは看護師が残薬管理をしていた夜間薬についても、すべて薬局で管理するようになりました。

 医療事故について事前に発見し防止した事例のうち、一二・七%は薬剤師が、八七・三%は看護師が発見したものと いうデータ(山内著『医療事故』より)からも分かるように、医療事故防止において看護師の役割は大きな比重を占めています。一方、「看護師しか防護壁にな れない」のではありません。看護業務の内容を分析し、他部門の関わりから業務配分を見直すことは、看護業務にとどまらず、医療の安全性を高めるものだと確 信します。

 お互いの専門性を充分に発揮することで医療の質も高まります。今後も安全な医療の構築のため、協力してとりくんでいきたいと思います。

(民医連新聞 第1352号 2005年3月21日)

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