声明・見解

2013年3月16日

【声明2013.03.16】「子ども被災者支援法」の基本方針の早急な策定及び現行諸制度の弾力的な運用と個別財政措置による支援の具体化を求める

2013年3月16日
全日本民主医療機関連合会
会 長 藤末 衛

 今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故により、環境中に大量放出された放射性物質が広 範囲に及び過去にない大災害となりました。放射性物質は長期にわたり留まることが明らかでまた原発事故の完全な収束が見通せない中で、福島県民および東北 から関東まで広範囲の住民に今後の生活や健康について大きな不安を呼び起こしました。事故直後から避難が強いられ、その結果仕事を失い、避難先では生活の 困難に直面しました。また避難指示を受けなかった住民においても、農作物を作れなくなり、作った製品も売れなく、観光地には客が来なくなるという苦しみが 待っていました。また健康への影響や避難を巡っての家族内の軋轢など、痛切な経験を抱えました。

 こうした事態に対して「放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」 (2011年8月成立)、「福島復興特別措置法」(2012年3月成立)がつくられ、環境回復や復興への大枠が示されました。環境の汚染へ対処に関する法 律は「環境の汚染が人の健康または生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することを目的とする」もので、汚染物質の管理や除染の実施を定めたものです。また 福島復興特措法は産業振興を含む多面的なものになっていますが、生活支援や健康を守る施策は十分ではなく、また対象が福島県内に限定されており県外の被災 者は対象になっていません。

 その根本的な原因は、戦後最大の公害事件ともいわれる今回の原発事故の原因の精査が現在も不十分であり、もっとも重要な国と加害企業東京電力の責任が明確ではないからです。

 こうした中で「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り 支えるための生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(以下“子ども被災者支援法”と略す)が成立しました。この法律は、被災者の人権を徹底して保障 するという憲法的視点を欠いており、具体化が行政庁の裁量に委ねられるなどの弱点を持っています。現に国(復興庁)は、基本方針策定の作業を怠り、 2013年度予算には全く盛り込まれていません。しかし、環境の回復、放射性物質に汚染された地域の住民や避難者の生活支援、健康管理、など原発事故被災 と多面的に対置する諸施策を求めており、一人一人の復興に焦点をあてた制度であるという点では、評価できるものです。

 東京電力の賠償渋り・先送り・打ち切り、除染の遅滞、国による支援がいつ打ち切られるかわ からないなど、住民の苛立ちや不安は深刻であり、一刻も早く基本方針策定と具体化が必要です。そのことにより、今後の、避難先での再建、あるいは帰還にあ たっても活用が期待される制度になります。また居住、就労、就学、移動、健康管理・医療などの項目が実現すれば、今後の災害復興における基本的人権の保障 の実現につながる意義をもつものと考えます。

 同時に、具体化されるまでの間支援が中断することは許されません。高速道路料金の無料化や住宅の手当て、健康を守る諸施策等現行法の柔軟な運用、個別の財政措置により被災者に寄り添った具体策を国政、地方行政を挙げて行うことを訴えるものです。   

以上

(PDF版)

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