副作用モニター情報〈465〉 活性型ビタミンD軟膏と利尿剤の併用で起きる高カルシウム血症
活性型ビタミンD3外用剤は乾癬などの皮膚症状に使われます。しかし、全身性副作用や内服薬との相互作用を起こすことがあります。今回は高カルシウム血症を起こした症例を報告します。
症例)80代男性。尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、高血圧で通院。皮膚科からオキサロール軟膏(マキサカルシトール)100gと白色ワセリン500gの混合剤と抗ヒスタミン剤内服2種、内科からはチアジド系利尿剤を含むロサルヒド配合錠LDとアレンドロン酸錠35mgが処方されていた。悪寒、戦慄、乾癬の悪化に加え、血清クレアチニン値(mg/デシリットル)が1.59に上がっていたため、精査目的で入院。外用薬の塗布範囲を全身に拡大。入院10日目に補正カルシウム値が11.7(mg/デシリットル)と高いことが判明し、高カルシウム血症と診断された。エルカトニン注射用40単位を開始、オキサロール軟膏とロサルヒド配合錠LDは中止に。翌日から血清クレアチニン値が低下し、入院15日目で改善。
活性型ビタミンD3にはカルシウム代謝を調節する作用があり、カルシウム濃度を上げる恐れがあります。製剤の脂溶性は高く、中でもマキサカルシトール軟膏は基剤に脂溶性のトリグリセリドが入っているため吸収されやすく、皮膚から全身へ薬物が移行します。そのため、高カルシウム血症になる恐れがあります。実際に、マキサカルシトール製剤の市販後調査では、血中カルシウム増加19件(2.3%)、高カルシウム血症6件(0.7%)、BUN増加8件(1.0%)でした。
また、利尿剤はチアジド系のものが遠位尿細管に作用しカルシウム排泄を阻害します。併用する場合、活性型ビタミンD3製剤の内服・外用とも、高カルシウム血症に特に注意が必要です。今回の症例はその両側面が現れたものでした。
高カルシウム血症は腎臓の血流量を低下させたり、腎障害を起こす危険があります。そのため、マキサカルシトール外用製剤は用量が制限され1日10gまで、カルシポトリオール含有製剤では1週間に90g(1日平均およそ13g)までとされています。なお、もともと腎機能障害のある患者の場合には慎重投与、皮膚障害のある患者には少量から開始するなどの制約があります。また、薬剤の投与開始から2~4週間後に最低1回は血中カルシウム値と腎機能を調べ、その後も定期検査が必要です。
(民医連新聞 第1628号 2016年9月19日)
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