副作用モニター情報〈174〉 高カロリー輸液療法中の銅欠乏症性貧血
2001年6月27日に行われた、第1回関東甲信越地協副作用モニター交流集会にて、高カロリー輪液施行中に、必須微量元素である銅の欠乏によって、貧血、白血球減少などを呈した症例をもとに、長期高カロリー輪液管理時の必須微量元素製剤添加の必要性が報告されました。
【症例】てんかん・重度四肢体幹機能障害・知能障害がある27歳の女性。胃ろうを造設したが嘔吐を繰り返すため、中心静脈栄養(IVH)管理となり、ユ ニカリック®が開始となった。開始約7カ月後に白血球数1100/mm3、好中球176/mm3、血色素量7.8/g/デシリットルと血液検査値異常が認 められた。当初併用されていた数種の抗てんかん薬や向精神薬による影響を考えたが、血液専門医により銅欠乏性貧血と診断された。血清銅10μg/デシリッ トル、セルロプラスミン3μg/デシリットルと低下を認め、必須微量元素製剤であるエレメンミック〓(鉄、マンガン、亜鉛、銅、ヨウ素の微量元素が配合さ れた注射剤)1A/日の投与開始により軽快傾向が認められた。
銅欠乏は高カロリー輸液施行後2~7カ月後に、鉄投与に無反応な貧血症状として出現し、白血球や好中球減少を伴うが血小板は減少しないとされています。 また、血清銅とセルロプラスミンの低下を認めるのが特徴であり、この症例の経過と一致しています。
銅以外で欠乏症の頻度の高い必須微量元素として亜鉛があり、IVH開始後約50日で発現するとされています。症状としては腸性肢端皮膚炎(爪・口・眼・ 肛周囲の鼻腔に浸潤した紅斑、脱毛、下痢の三大症状を認める)や、口内炎等が特徴的です。IVH管理が2週間以上続く場合には必須微量元素製剤の投与を行 う事が必要です。また、過剰な投与を防ぐため、微量元素投与経過中の微量元素血中モニタリングも定期的に行い、患者様の状態に十分注意する事が必要です。
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