副作用モニター情報〈456〉 抗てんかん薬カルバマゼピンによる皮膚障害
部分てんかん発作に対して新規抗てんかん薬の使用が拡大しています。しかし、日本神経学会のてんかん治療ガイドラインでは、カルバマゼピン(商品名:テグレトールなど)が第一選択薬とされています。この薬剤は三叉神経痛をはじめとする神経障害性疼痛にも古くから使用されてきました。
カルバマゼピンによる皮膚障害は当モニターにも多く報告されています。周知の副作用ですが、重症薬疹に進展する場合もあります。厚労省の副作用報告数でも、カルバマゼピンは、中毒性皮膚壊死症、皮膚粘膜眼症候群、薬剤過敏症候群などの重症皮膚障害の報告がアロプリノールと並んで多い薬剤です。
症例)女性。耳下腺腫瘍切除後の神経痛に対して、星状神経節ブロックを行い、カルバマゼピン200mg/日、アミトリプチン10mg/日投与。開始11日目に発熱あり、13日目には39℃に上昇。14日目に中止し一旦解熱するも、20日目に再度発熱し腰部に掻痒感を伴った皮疹が出現。24日目、皮疹が全身に広がり入院。内服薬は全て中止し、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム注40mg/日、ファモチジン注20mg/日、ステロイド外用剤にて治療開始。25日目、体幹部にはほとんど正常皮膚が見られないほど全身に癒合した紅斑が出現し、熱感あり。水疱なし。体温は36~37℃台前半。軟口蓋に発疹。咽頭発赤軽度。その後、ステロイド薬ベタメサゾンを投与し一進一退がありながら、紅斑にやや改善が見られた38日目、クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏を追加処方。薬剤によるリンパ球刺激試験を施行すると、カルバマゼピンが陽性であった。その後、ベタメサゾン漸減し症状は徐々に軽快。66日目、ベタメサゾン内服終了(一部省略。商品名は一般名に変更しています)。
これは薬剤過敏症候群が疑われる症例でした。発症すると死亡や、障害が残る場合もあり、長期にステロイド治療が必要です。初期の対応も重要で、発熱や皮疹の訴えがあれば原因が明確な場合を除き、すぐ薬剤を中止し適切な処置を行うことが必要です。
(民医連新聞 第1618号 2016年4月18日)
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