副作用モニター情報〈451〉 糖尿病治療薬アプルウェイによる腎盂腎炎
トホグリフロジン水和物(製品名:アプルウェイ(R))は糖尿病治療薬の一つで、SGLT2阻害薬です。腎臓の近位尿細管でのグルコース再吸収を抑え、血液中の過剰なグルコースを尿中に排出させます。作用する仕組みが従来の薬剤と比べ新しく、体重減少効果などでも注目されました。
しかし、死亡例を含め重篤な副作用報告が相次ぎ、日本糖尿病学会が2014年6月「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を公表するに至りました(同年8月改訂)。その後も副作用報告は続き、厚生労働省が添付文書の改訂を指示。重大な副作用に、(1)低血糖(特に他剤との併用)、(2)腎盂腎炎および敗血症、(3)脱水、(4)ケトアシドーシス、が添付文書に記載されました(2015年1月)。
尿量の増加と体液量減少による脱水、それに続く脳梗塞を含む血栓・塞栓症が報告されていますので、特に高齢者への投与に注意が必要です。また、尿中にグルコースが排泄されるため、尿路・性器感染症の副作用は予想されていましたが、重症化し腎盂腎炎になるケースもトホグリフロジンで6例(うち因果関係が否定できない症例2例)報告、重大な副作用として追記されています。
当モニターにも、因果関係が否定できない腎盂腎炎の発症例が報告されました。
症例)50代女性、民医連外の医院で血糖コントロール目的でアプルウェイ20mgを追加投与。開始68日目、排尿時に血尿を認め受診。40.2℃の発熱、尿蛋白3+、尿潜血1+で腎盂腎炎を疑い入院。投与開始69日目、内服中止。血糖コントロールはインスリン投与で行った。投与中止3日目に解熱し、投与中止10日目に退院となった。
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尿路・性器感染に関連する副作用は、男性より女性に多く報告されています。投与開始2~3日や1週間以内から、症例のように2カ月後に発症した報告もあります。排尿時の痛みや残尿感、尿の濁り、発熱を伴うなど、副作用が現れたときの症状を患者によく説明しておくことが重症化防止に重要です。
SGLT2阻害薬は、海外でも様々なリスクが警告されています。既存の治療法では改善されない場合の選択肢として、対象を限定して使用することが必要です。
(民医連新聞 第1612号 2016年1月18日)