疼痛治療剤リリカによる重篤な低血糖 副作用モニター情報〈448〉
2009年4月~12年6月までの間、メーカーに報告されたプレガバリン(製品名:リリカ)による低血糖は3件あり、2012年8月には使用上の注意に低血糖が追記されました。2015年7月には報告は18件に増え、転帰は入院3件、不明10件、中止4件、改善1件と、入院にまで至る重篤な例も報告されています。患者の年齢は52~95歳で年代間に有意差は無く、投与量は25mg2件、50mg3件、75mg5件、150mg6件、450mg1件と、用量が多いほど発現しやすい傾向があります。
発現期間は翌日~53日までですが、53日の1例以外は1カ月以内の発症で比較的早い時期でした。糖尿病薬との併用は、グリメピリド6件、インスリン3件、なし8件、不明2件と、併用薬の有無とは関わりがありません。
当モニターにも、この1年間でリリカによる低血糖の報告が2件あり、1件はグリメピリドとの併用でしたが、1件は血糖降下薬や低血糖を起こす可能性のある薬剤の併用は無く、リリカのみによる低血糖が考えられる症例でした。
症例1)50代男性。むずむず足症候群にてリリカ50mg分2開始。開始4日後に75mg分3、開始8日後には150mg分3と増量し、服用開始10日目に低血糖発作あり空腹時血糖54。ブドウ糖をとり、改善。
症例2)80代女性。グリメピリド0.5mg服用中。慢性腰部疼痛にてリリカ50mg分2開始。服用開始より傾眠傾向あるも食事摂取は良好。服用開始4日目、意識レベル低下あり空腹時血糖40。ブドウ糖静注で対応するも回復せず、ブドウ糖持続注して数時間後に回復。グリメピリド中止。
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リリカによって低血糖が引き起こされる仕組みは現在のところ不明です。同様の薬効を及ぼす仕組みを持つガバペンチンでは低血糖による死亡・再燃事例(WHOデータベース)が報告されています。これは、膵β細胞のGABAAレセプターの活性化により、電位依存性カルシウムチャネルを開いて細胞内にCaイオンの流入を促進し、インスリン分泌を促すことが示唆されています。リリカはGABA受容体に結合しないと言われていますが、臨床的にはGABA様作用があることから、同様の仕組みで発現していることも考えられます。
当モニターへの報告例では服用開始後、早期に発現しています。血糖降下薬もしくは低血糖を起こす可能性のある薬剤の有無に関わらず低血糖を起こす可能性がありますので、低血糖症状やその対応についての患者指導が必要です。
(民医連新聞 第1607号 2015年11月2日)
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