抗コリン薬による中枢神経系の副作用 副作用モニター情報〈447〉
抗コリン薬は、腹痛や頻尿、パーキンソン病などに投与されます。「コリン(正しくはアセチルコリン)作用」とは、副交感神経から出た神経伝達物質であるアセチルコリンが各臓器に働き効果を及ぼす作用です。お腹が痛い時、腸管は活発に動いている状態で、これを「コリン作用がすすんでいる」といいます。抗コリン作用を持つ薬剤は、その痛みをとります。頻尿にも同じように作用します。
腸管や尿道に働いた場合は腹痛や頻尿を抑えますが、まれに脳に影響を与え様々な副作用を起こすことがあります。当モニターには以下のような症例が報告されています。
症例1)70代男性。前立腺肥大症に伴う頻尿に、塩酸プロピベリンが処方された。服用7日目、頻尿症状は無くなったが、「頭に霧がかかったような感覚」を訴える。服用11日目、症状が続き、自己中止。中止後2日目、頭の症状が改善した。
症例2)40代女性。「頭がそわそわする」という症状に対して、ピペリデンが処方された。服用7日目、発語困難や異常行動が出現。さらに服用14日目に、漢字や考えたことが思い出せないなどの症状が出現。内服中止し、症状は改善した。
症例3)50代男性。頻尿症状に対してプロピベリンが処方されたが、服用2時間後に頭痛が発現。しばらく続いた後に、回復した。朝夕で服用を続けていたが、そのつど、服用後2時間ほどで頭痛発現、数時間続いたのち回復を繰り返したため、自己判断で服用中止した。
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抗コリン作用のある薬剤は、添付文書の副作用欄に「見当識障害、一過性健忘などの意識障害」の記載があります。薬剤によって違いはありますが、腸管や尿道に効くよう設計されていても、少量の成分が脳内に移行するため、中枢神経系に副作用を及ぼすと考えられます。発現頻度が多くないとはいえ、注意が必要です。
(民医連新聞 第1606号 2015年10月19日)
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