副作用モニター情報〈440〉 抗ヒスタミン剤とけいれん ~添付文書に記載がなくても注意!~
オロパタジン塩酸塩(製品名:アレロック)は、アレルギー性鼻炎などに有効な薬剤です。当モニターにけいれんの副作用が報告されました。
症例)小学生の男児。てんかんがあり神経科でラミクタール(抗てんかん薬)が処方されていた。また、慢性鼻炎もあり、耳鼻科でクラリチン(抗ヒスタミン剤)も処方されていたが、アレロックに変更後、それまで起きていなかったけいれん発作が続いた。神経科の医師がアレロック中止を指示し、その他の抗ヒスタミン剤も禁忌とした。中止後、けいれん発作は起きず、てんかん発作もなくなった。
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脳の働きに大切な神経細胞は、血液脳関門によって有害物質から守られています。抗ヒスタミン剤は、その血液脳関門を通過してしまうため、脳内でもヒスタミンの働きを低下させてしまいます。ヒスタミンは、脳細胞のネットワークに起きる異常な神経活動(てんかん放電)を抑制する仕組みと深く関わっているとみられ、脳内のヒスタミンレベルが低下すると、けいれんが引き起こされると考えられています(参考:厚生労働省重篤副作用疾患別対応マニュアル)。
近年、学習障害や自動車運転事故などの教訓から、脳内に移行しにくい抗ヒスタミン剤としてアレロックやクラリチンが開発されました。添付文書に「てんかん・けいれんの既往には禁忌」と記載されている抗ヒスタミン剤もありますが、どちらも禁忌もしくは慎重投与とはされていません。前述の症例では、けいれん発症のリスク因子は、もともとてんかんがあったこと、GABA系神経が未発達な小児であったことが考えられます。
けいれんは、てんかん・けいれんの既往、高齢・小児・身体的衰弱、抗ヒスタミン剤の血中濃度の上昇、併用薬剤との相互作用などで発現しやすくなるといわれています。添付文書に記載がなくても、患者のリスクを考慮したうえで、抗ヒスタミン剤の処方を判断しましょう。
(民医連新聞 第1599号 2015年7月6日)
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