副作用モニター情報〈375〉 シロスタゾールと頻脈
シロスタゾールは、慢性動脈閉塞症の諸症状の改善や脳梗塞の再発予防に使用されてきました。2011年度、同剤についての副作用報告は26症例、 35件。うち動悸や頻脈は14件でした。2006年にも当欄で報告しましたが、副作用報告件数は増えています。適応症の拡大、臨床試験の結果等から使用頻 度が増えている影響とみられます。
シロスタゾールは、血小板、血管、心筋などに存在するホスホジエステラーゼIII(PDEIII)という酵素を阻害し、サイクリックAMP(cAMP) の分解を抑え、血小板の凝集(血小板が集まって血液を固める)を抑えます。cAMPにはさまざまな生理活性がありますが、血管を拡張させたり、心収縮力を増強させたり、血小板では凝集を防ぐ作用があります。服用で起こる頻脈は、血管拡張による反跳性のもの、心筋への作用と考えられます。
症例) 70代男性、慢性動脈閉塞症、不安定狭心症、糖尿病。MRIの結果から、シロスタゾール50mg、1日2回処方。投与開始から21日後、血圧116/64、脈拍116~120になり、同剤を中止。19日後に血圧119、脈拍80台まで下がる。
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2010年、シロスタゾールがアスピリン服用群と比較して、わずかではあるが、より脳梗塞 の再発予防に効果があるという臨床試験結果が発表されました(CSPS2試験)。しかし、この試験でも有害事象としての頻脈はアスピリン群よりも多くあり ました。もともとPDEIII阻害剤は、心筋の収縮力を強めるため、心不全の治療薬として開発されました。しかし、結果的には心臓の負荷が増し、長期的な 使用で死亡率が高まることから、いくつかの薬が販売中止や、急性期に限定した使用となりました。シロスタゾールも、うっ血性心不全には禁忌となっていま す。心拍数増加による狭心発作誘発について、注意喚起もされています。CSPS2試験やそれに続くCASTLE試験(長期使用での予後を見た試験)でも、心不全患者は除外されました。
シロスタゾールの適応症である慢性動脈閉塞症や脳梗塞は、動脈硬化や高血圧を合併している場合が多く、長期的には心不全を発症する患者も多いため、加齢や病態の変化をみて処方を見直すことが必要です。
(民医連新聞 第1527号 2012年7月2日)
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