副作用モニター情報〈432〉 メトロニダゾールによる中枢神経障害
メトロニダゾールは、抗トリコモナス剤として1957年から使用されてきました。世界的には嫌気性菌治療剤としても使用され、日本でも2012年8月に「嫌気性菌感染症、感染性腸炎、アメーバ赤痢、ランブル鞭毛虫感染症」の「効能・効果」が追加承認されました。これにより、高用量で長期に使用される症例が増えてきました。
症例)70歳代 女性 体重33kg
子宮留膿腫の診断でメトロニダゾール投与開始(他院のため開始時の投与量は不明)。
投与141日目 徐々に体重減少。嘔吐、嘔気出現し食事摂取困難。精査目的で入院。内服薬は紹介状記載のものを継続。電解質、血糖値、頭部CT、胃カメラ、腹部エコー、異常なし。メトロニダゾール錠は1000mg/日 分4で投与続行。
投与154日目 誤嚥性肺炎を疑いCTRX点滴投与。
投与157日目 誤嚥リスクあり、中心静脈栄養管理となる。その後、MPEM点滴に変更。炎症反応改善、解熱傾向のためMEPM中止、同時にメトロニダゾールも中止。
中止2日目 入院後、上肢の不随意運動、振戦が目立ちADL低下。CT画像では不随意運動の原因と考えられる所見なし。頭部MRI施行。
中止9日目 MRI画像(脳梁膨大部病変)より、メトロニダゾール脳症が考えられる。メトロニダゾールはすでに中止しており、経過観察となった。
中止15日目 不随意運動改善傾向。
中止37日目 右手の振戦が残る程度。
中止66日目 徐々に経口摂取量アップ。
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メトロニダゾールは、たん白結合率が低く、血中にとどまらず組織に移行します。また尿中排泄が遅延することから、組織にとどまり排泄しにくい薬剤と考えられます。
脳にも移行するため、脳に器質的な異常がある患者は禁忌です。末梢神経障害、中枢神経障害等の副作用が現れることがあるので,特に10日を超えて長期に本剤を投与する場合や1500mg/日以上の高用量投与時には、副作用の発現に十分注意する、とされています(添付文書)。
今回の症例は低体重であり、もとの投与量そのものが過量であった可能性があること、5カ月に及ぶ長期の投与、などが原因と考えられます。膿瘍を形成する場合は長期投与になる場合がありますが、神経症状の発現には十分注意し、MRIなどで病変の有無の確認が必要です。
(民医連新聞 第1591号 2015年3月2日)
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