副作用モニター情報〈422〉 メトクロプラミド(プリンペラン)による錐体外路症状に注意
メトクロプラミドは、胃腸の働きを良くする薬剤で、吐き気や嘔吐、食欲不振などに用います。当モニターには、精神・神経系の副作用として、最近1 年間で3例が報告されました(小児2例、高齢者1例)。小児の2例は投与直後と投与1日で発現した急性ジストニア、高齢者の1例は長期服用による薬剤性 パーキンソニズムでした。高い血中濃度が確認されるなど教訓的な事例です。
メトクロプラミドの添付文書には「小児では錐体外路症状(ふるえ、こわばり、つっぱりなどの運動症状)が発現しやすいため、過量投与にならないよう注意 する。特に脱水状態、発熱時等には注意する」「高齢者では腎機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続するおそれがある」と注意喚起があります。 重大な副作用では、長期投与による遅発性ジスキネジアの警告がされています。
【症例1】7~12歳、男児
インフルエンザ罹患後、1週間が経過していたが胃部不快感あり、点滴とメトクロプラミド10mg静注。点滴終了後、眼球上方偏位、四肢の緊張が出現。
【症例2】13~15歳、女児
感冒で発熱。解熱したが吐き気あり、メトクロプラミド1日30mg処方(体重44kg)。投与開始の夜から頸部痛、右肩痛、吐き気、ふらつきあり。翌日 には仰臥位で頸部が右に回旋、眼球が右に。共同偏位を頻回に認め、座位では反り返りと頸部が右に回旋する症状が出現。
【症例3】70~74歳、女性
「吐き気ではないが気持ちが悪い」との訴えに対し、メトクロプラミド1日15mgを6カ月間にわたり定期服用。歩きにくさが強くなり、布団で転んだとの訴えあり。表情は悪くはないが、パーキンソン症候が出現。
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錐体外路症状の発現頻度は不明ですが、特に筋緊張の異常反応は、小児では投与開始すぐに起こりやすく、通常 0.5mg/kg以上で起こると言われています。パーキンソン様症状や遅発性ジスキネジアは、長期間服用した高齢者(特に高齢女性)に多くみられ、いずれ も報告症例と一致しています。
急性の錐体外路症状は中止後24時間以内に消失しますが、長期服用による運動障害は中止後も持続することがあり、その危険性は服用期間と総蓄積投与量により増加すると考えられています。
小児では過量投与の可能性を考慮し、用量と発熱等の背景に注意すること、高齢者では高い血中濃度が持続することを懸念して長期投与を避けることが重要です。
(民医連新聞 第1579号 2014年9月1日)
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