副作用モニター情報〈403〉 健胃消化剤の落とし穴 ~高カルシウム(Ca)血症と低カリウム(K)血症~
健胃消化剤による高カルシウム血症と低カリウム血症の報告です。市販薬では、パンシロンGや太田胃酸、新キャベジンコーワSなどが有名です。生薬 成分による食欲亢進や胸部不快症状の緩和を思い浮かべますが、実は、効果の本質は重曹またはカルシウムによる胃酸の中和作用です。
医療用でも同じ発想で配合されていますが、個々の製品における重曹や炭酸カルシウムの配合量が異なります。MM散とAM散における重曹の配合量は、1回量 1.3g中それぞれ0.3gと0.6g、炭酸カルシウムは0.2gと0.3gです。
症例)80代後半の女性。A病院入院時の処方
Rp1)アルファカルシドール0.5μg2cap/分 2、アスパラCA錠200mg4T/分2
Rp2)MM散 3.9g/分3
処方から16日目にB病院に転院。食事量は2~4割程度と少ない。29日目にMM散をAM散に変更、39日目に上記薬剤を中止、その後、食事量は6~9割 に上昇。51日目に退院。臨床症状として、食欲不振、イライラ感などの情緒不安定が見られました。
この症例では、複数の要因が考えられます。高カルシウム血症については、80歳代後半と高齢で、かつアルファカルシドール1μg/日、アスパラギン酸カル シウム800mg/日投与に加えて健胃消化剤由来のカルシウム分が追加となったこと、低カリウム血症では、食事摂取量が少なくなっている上にAM散による 重曹負荷量が1日1.8gと増えたので、相対的にナトリウム/カリウムバランスがナトリウム過量に傾いたことが原因と考えられます。仮に利尿剤が併用され ていれば、重篤な低カリウム血症に陥っていたかもしれません。
検査値に頼るだけでなく、症状からも早期に副作用を疑えるよう、観察眼を高めることが必要です。
(民医連新聞 第1557号 2013年10月7日)
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