副作用モニター情報〈397〉 スルピリドによる薬剤性パーキンソン症候群について
スルピリド(先発品:ドグマチール)は1970年代に承認・発売された、ベンズアミド系の抗精神病薬です。用量によっていくつかの適応症を持って おり、低用量では、胃・十二指腸潰瘍、うつ病、高用量では、統合失調症に用いられます(ドーパミンD2受容体の阻害作用があります)。この1年間で12例 の副作用報告が当モニターに寄せられました。
幅広い年齢層で使用されていましたが、うつ病とこれに関連した食欲不振への処方がほとんどであり、服用量はすべて1回50mg1日150mgまででした。
精神・神経系の副作用が最も多く、8例です。このうち黒質線条体におけるドーパミンD2受容体阻害作用によると思われる、パーキンソン症候群の報告が6 例ありました。症状としては、すり足、振戦、小刻み歩行(歩幅が狭い)、ふらつき、筋強剛などが出現しています。ほとんどが75歳以上の高齢の方でした (本薬剤は腎排泄型であり、特に高齢者への注意は必要と言えます)。
その他、女性化乳房、月経不順、胸の痛み、恐怖感・幻覚など報告がありました。
パーキンソン症候群の発現時期については、服用開始後2カ月後が最短ですが、「不明」の報告症例が多く、長期にわたって服用されている間に、副作用症状 とスルピリドとの関連が見過ごされている例も多いと思われます。薬局の薬剤師から処方医への文書報告によって中止、回復された例もありましたが、一方で服 用開始後3年以上を経過し、中止後に遅発性ジスキネジアを発症し口のモゴモゴが残った例が1例報告されています。
* *
歴史の古い薬剤で、他の抗うつ剤との併用も多いと思われますが、長期で服用されている患者さんに、再度スルピリドに焦点をあてたチェックが必要と思われます。
その他、メトクロプラミド(製品名:プリンペラン)も、ベンズアミド系薬剤であり、血液脳関門を通過し同様の副作用発現の可能性があり、注意が必要です。
(民医連新聞 第1551号 2013年7月1日)
- 記事関連ワード
- 副作用副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)症状