副作用モニター情報〈395〉 シロスタゾールの危険と使用制限
EU(欧州連合)の医薬品規制機関EMA(European Medicines Agency)は、2013年3月に間欠性跛行治療薬としての シロスタゾールの使用について、臨床的利益があり、かつ重大な危険が最小限に抑えられる患者集団のみに制限すべきと勧告を出しました。現時点においては、 特に心臓関連の副作用や重篤な出血の危険をわずかに上回る利益(プラセボに比べ、患者の歩行距離を43.4m延長する効果)があることが示されている程度 に過ぎません。WHOは以前から、閉塞性動脈硬化症の治療薬としては最強だが最良の薬剤ではない、という立場を変えていません。
重度の頻脈性不整脈(頻拍を伴う心調律異常)の既往やバイパス手術を受けた患者、アスピリンやプラビックス(一般名:クロピドグレル硫酸塩)などの抗血 小板薬や抗凝固薬を2剤以上併用中の患者、不安定狭心症のある患者、6カ月以内に心筋梗塞や経皮的冠インターベンションを経験した患者には用いるべきでは ない、CYP3A4またはCYP2C19を強力に阻害する薬剤を使用している患者では用量を減量すべき、3カ月ごとに治療が適切か見直しを行うべき、臨床 的に意味のある利益が得られない患者では使用を中止すべき、と厳しい内容です。
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有害作用の自発報告では、動悸、頻脈が全体の5%程度で最も多くを占めています。この1年間に当モニターに寄せられた報告は22例。うち動悸、頻脈は 13例で、2011年度と同様の傾向です。抗血小板剤等の3種併用はありませんでしたが、アスピリン併用での鼻出血が1例、ピオグリタゾンとの併用で体重 が1週間で3kg増加した例、心房細動が悪化した例が目を引きました。浮腫は4例でした。
EMAの勧告のように、極めて限られたケースのみ有益性があるということを念頭において、運動、食事の改善、禁煙など、生活習慣を変えても症状が改善さ れない患者のみに処方を開始する、現在服用中であれば継続服用が適切なのか再検討を行うなどの対応にしてはどうでしょうか。
(民医連新聞 第1549号 2013年6月3日)
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