副作用モニター情報〈394〉 ワルファリン服用患者の栄養療法の留意点
当モニター347回(2011年2月21日付)で、栄養剤や抗菌剤との相互作用によるワルファリン服用患者のPT-INR(プロトロンビン時間国 際標準比)の増加について報告しましたが、今回もワルファリン服用患者で抗菌剤の使用や輸液、経管栄養剤の切り替えによって、出血傾向になった事例が報告 されました。改めて注意喚起が必要です。
【症例】90歳代女性、心原性脳梗塞にてワルファリンカリウム1.25mg/日服用
入院前のINRは1.28。入院後、急な発熱で、レボフロキサシン250mg/日を開始し、その後改善しないので、点滴でセフメタゾール+アミカシンを 2日使用したところINR3.7に上昇したため、ワルファリンと抗生剤を中止した。翌日にはINR6.0まで上がったため、メナテトレノン注射液を投与し た。
入院直前に、偽膜性腸炎を発症しており、メトロニダゾールによる治療も行っていた。また入院時に栄養がエンシュア(ビタミン K52.5μg/750ml)からYHフローレ(ビタミンK21.6μg/1200ml)に変更となっていた。さらにその後、経腸栄養からアミノフリード (ビタミンK含有なし)に変更となり、ビタミンKの補給がない状態であった。
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ワルファリン服用患者が感染症を発症したり病態が悪化すると、抗菌剤や栄養剤の種類、投与経路が変更になります。そのため栄養剤に含まれるビタミンK量 が変化したり、抗菌剤によるビタミンK産生腸内細菌が抑制されるなどして、ワルファリンとの相互作用でPT-INRも変化します。絶食下では腸内細菌叢が 変化したり、結合タンパクであるアルブミンが減少するため、それだけでPT-INRが変化する場合もあります。ワルファリンの量は同じなのに、食事の開始 に伴いPT-INRが急激に低下した症例もあります。
とくに高齢者や、下痢(ビタミンK吸収阻害)、肝障害(ビタミンK産生障害)、腎不全(薬剤排泄遅延)などのある患者では、頻回に測定を行い、出血傾向 にも留意する必要があります。経腸栄養剤は食品に分類されるものも多く、臨床試験が不要で容易に成分を変更できるため、メーカーの都合や厚労省の必要栄養 所要量改定などに伴い、変更される場合があります。ワルファリン服用患者では、薬剤師、栄養士をはじめ医療スタッフ間での情報交換が重要になってきます。
(民医連新聞 第1548号 2013年5月20日)
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