副作用モニター情報〈391〉 「ハーセプチン」による爪の障害
「トラスツマブ(製品名:ハーセプチン)」は、HER2(ヒト上皮増殖因子受容体type2)に特異的に結合する「ヒト化モノクローナル抗体」製剤で、 HER2陽性乳がんに対する標準治療薬として、国内外のガイドラインで推奨されています。 このたび、ある事業所でトラスツマブを3週ごとに投与(B法) 中の患者に爪がひび割れたり、欠ける症状が観察されました。同事業所に通院治療中の患者について、同様の症状の発現の有無を集中的にモニターすると、8人 中7人の患者に同様の症状がみられたとの報告が寄せられました(下表)。
本剤による爪障害の副作用は、承認時の各種臨床試験で2.4~12.2%で、海外よりも国内のほうが多い傾向です。作用機序は明確でありませんが、ヒト 上皮増殖因子受容体を標的にした本剤は「EGFR阻害剤」と同様の機序で皮膚・粘膜障害(皮膚乾燥、爪障害、鼻出血、下痢等)を起こすと考えられます。爪 障害の発現時期は、投与5~6カ月後でやや多くなるとの報告で、皮膚障害と爪障害では皮膚障害が先行して発現する傾向があります。
報告者は、「今回3週間ごと投与(B法:初回8㎎/㎏、以降6㎎/㎏)の患者8人中7人に爪・皮膚障害が認められ、添付文書の記載より高頻度で副作用が 起こっているのではないかと考えられた。一方で、毎週投与(A法:初回4㎎/㎏、以降2㎎/㎏)の患者では爪障害の訴えは少なく、1回の投与量が爪障害の 発生頻度に関係する可能性が示唆された」としています。
爪障害は軽微な副作用ですが、投与対象は主婦層が多く、家事に支障が出るなどQOLに影響します。注入反応や心機能障害以外は副作用が少ない薬剤とされ ていますが、このような副作用にも注意しながら同効薬のラパチニブ(製品名:タイケルブ)と同様の指導を行う必要があります。
(民医連新聞 第1545号 2013年4月1日)
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