副作用モニター情報〈388〉 リドカイン中毒
リドカインは麻酔薬として、また、抗不整脈薬として医療現場では欠かすことのできない薬剤です。汎用されているため、危険が潜んでいることを忘れがちです。今回はリドカイン外用液による中毒症例を報告します。
症例)20代後半の女性。身長167cm、体重46kg。気管支内視鏡検査のため、気管支麻酔目的で4%リドカイン外用液を2%液に希釈して吸入麻酔を実施、検査を 開始した。麻酔開始35分後、全身性の痙攣が出現し、検査を中止。呼吸停止に至ったものの、ジアゼパム注射液、フェニトインの投与や補液、呼吸管理を遅滞 なく行い、事なきを得た。
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リドカイン血中濃度の安全域は3μg/mlとされています。5μg/ml以上になると中枢神経症状が出現し、10μg/ml以上になると痙攣などの重篤 な症状が発現します。プロカインアミドを源流にもつアミド系の局所麻酔剤では、中枢より先に心臓に心室頻拍や心室細動を引き起こすブピバカインを除いて、 リドカインやロピバカインなどは中枢毒性が先行して発現するので中毒症状の事前モニターは困難です。
この患者は、BMI16.5と明らかに痩せており、脂肪組織が非常に少ないとみられます。脂肪組織からの再分配を受けてリドカインが中枢組織に高濃度に 移行したのでしょう。効果は落ちますが、体重や身長を考慮し1%溶液で麻酔を行う、添付文書上の上限であるリドカインとして100mg以上は準備しない、 などの予防策を講じ、過量投与にならない工夫が必要と思われます。
同じく外用剤のキシロカインゼリーも30mlすべて使用すると600mgになり、過量投与になる可能性があります。リドカイン・プロピトカイン配合製剤 (製品名:エムラクリーム)でも中毒事故が予測されるため塗布範囲が決められています。外用薬でも中毒への配慮が必要です。
(民医連新聞 第1542号 2013年2月18日)
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