副作用モニター情報〈382〉 小児のトスフロキサシントシル酸塩水和物細粒による間質性腎炎
トスフロキサシントシル酸塩錠(商品名・オゼックス(R)錠)は、1990年に発売された咽頭・喉頭炎や肺炎、膀胱炎、感染性腸炎等に適応を持つニューキノロン系抗菌薬です。
2010年1月には、「肺炎・コレラ・中耳炎・炭疽」を適応症として、トスフロキサシントシル酸塩水和物細粒(商品名:オゼックス(R)細粒小児用 15%)が発売開始されました。当副作用モニターには、間質性腎炎1例が報告されています。
症例)13~15歳の患者に対し、以前他院より処方されていたこともあるとの理由で、感冒に処方。服用開始翌日には間質性腎炎を発症して入院となり、 BUNが35.8まで上昇しましたが、10日後ほぼ改善しています。
トスフロキサシントシル酸塩錠発売以降、厚生労働省に、本成分による急性腎不全が12例、報告されています。処方適応も含め十分に留意する必要があります。
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トスフロキサシントシル酸塩錠による副作用は、過去2年間で6症例9件、当副作用モニターに報告されており、グレード2を示した過敏症状2例をはじめ、胃痛や食欲低下2件、脱力感1件、口のしびれ・舌の痛み1件、などとなっています。
トスフロキサシントシル酸塩錠は日本と韓国でのみ、小児用のトスフロキサシントシル酸塩水和物細粒は日本だけで発売されている「ローカルドラッグ」であ る事にも留意する必要があります。治療上の位置づけだけでなく、海外から安全性に係る情報が得られない点も懸念されます。
なお、ニューキノロン系抗菌薬の内服薬で、小児に対し適応を持っているのはトスフロキサシントシル酸塩水和物細粒を含め4製剤のみですが、ノルフロキサ シン(商品名:小児用バクシダール錠)は「他の抗菌剤が無効と判断される症例に対してのみ投与」、レボフロキサシン水和物(商品名:クラビット細粒)や塩 酸シプロフロキサシン(商品名:シプロキサン錠)は、「小児に対しては、炭疽等に限定」となっています。小児に対する関節毒性などのリスクも考慮し、適応 を限定して投与することが重要です。
(民医連新聞 第1534号 2012年10月15日)
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