副作用モニター情報〈378〉 抑肝散エキス顆粒による低カリウム血症
2010年以降、当副作用モニターに抑肝散による低カリウム血症が2例報告されています。
抑肝散は、グルタミン酸系やセロトニン系などの神経伝達に対する調整作用が示唆されており、現在、認知症の周辺症状である幻覚や妄想、焦燥感などに、神 経興奮を抑制する目的で多く処方されています。また、配合生薬の釣藤鈎には、アルツハイマー病における神経細胞死の原因と考えられている、アミロイド蛋白 の凝集抑制作用も示唆されています。
症例)80代のアルツハイマー型認知症、及びレビー小体型認知症の患者に対し、ドネペジル(アリセプト)と併用していました。カリウム値は服薬開始後約2 週間で、2.5~2.9mEq/Lまで低下しましたが、アスパラK散で対応し、元の数値まで回復しています。
* *
漢方薬による偽アルドステロン症についてはこれまで、芍薬甘草湯による症例を当モニターで2008年8月に紹介し、注意喚起をしてきました。生薬組成だ けをみると、原因とされる「甘草」は、芍薬甘草湯が50%の配合率に対し、抑肝散は約7%の配合率であり、比較的少ないと言えます。しかし、患者さんが高 齢、低体重(今回はいずれも40kg未満)であったり、服用が長期にわたる場合は、定期的な検査値のチェックや手足のしびれや脱力感、筋肉痛などに注意が 必要です。今回の2症例は1日5g(2包)服用での発現でした。
また、抑肝散については80代女性の死亡例を受けて、2010年に添付文書が改訂され、重大な副作用として間質性肺炎が追加されています。
(民医連新聞 第1530号 2012年8月20日)
- 記事関連ワード
- 副作用副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)検査症状