副作用モニター情報〈374〉 シタグリプチンの肝障害・膵炎についての注意喚起
DPP―4阻害剤は低血糖のリスクが少なく使いやすいという評価がある一方で、新しい作用機序の薬剤であるため、未知の副作用・重大な副作用を懸念する声も出ています。
シタグリプチン(商品名「ジャヌビア錠」「グラクティブ錠」)による急性膵炎は、2011年1月に「重大な副作用」として追記されて以降も、数例の報告 があがっています。全日本民医連の副作用モニターにも2011年度1年間でグレード2以上の急性膵炎が2例報告されています。
症例1)70代女性、アルコール摂取無し。投与11カ月で急性膵炎発症。投与中止後、尿中Amy、血清Amy、WBC値、症状など徐々に回復。
症例2)60代女性。投与半年で重症急性膵炎発症。LST陽性。投与中止15日後、軽快。
どちらの症例も投与から半年以上経過していることから、薬物の代謝産物の蓄積と個体側の感受性が関与していると思われます。発症機序は不明ですが、急性 膵炎がシタグリプチンによる副作用の可能性は否定できない、あるいは可能性が高いと思われます。
肝機能障害についても、2011年度は当モニターに5症例報告されています。4例は投与後1~7カ月と比較的早期に発症しています(1例は投与期間不 明)。いずれも服用開始後の発症で、シタグリプチンによる副作用の可能性が高いと思われる症例です。
このほか、シタグリプチンによる副作用報告は消化器症状や低血糖(SU剤併用または単独投与)、発疹などの皮膚症状、間質性肺炎などの重篤な副作用な ど、数多く報告されています。今後も未知の副作用、重篤な副作用が報告される可能性が高い薬剤です。
投与の際は、定期的に臨床検査値を測り、異常変動には注意が必要です。患者の状態を観察し、服薬指導では注意喚起が必要です。
(民医連新聞 第1526号 2012年6月18日)
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