副作用モニター情報〈373〉 ST合剤の使用をめぐる問題点
抗菌剤のST合剤は、現在はより強力な殺菌作用を持つβラクタム系薬剤に治療の主役を譲っていますが、尿路感染とニューモシスチス肺炎の治療で今も抗菌剤として利用されています。
Goodman&Gilman (以下G&G)薬理学書には「急性無併発尿路感染のいくつかの場合には有効であり、最低3日間治療した方が良い」とあり ます。しかし、神戸大学の岩田健太郎教授(医師)は、利益と危険のバランスから、「尿路感染に対して使用する時は3日間」と具体的な日数で紹介しています し、添付文書では、単純性膀胱炎には適応がなく、警告には「血液障害、ショック等の重篤な副作用が起こることがあるので、他剤が無効、または使用できない 場合のみ投与を考慮する」とあります。第一選択として使用すべきではない、ということです。
当モニターに寄せられた47症例59件のうち、この1年では報告件数が13症例にのぼり、使用頻度が増えているかもしれません。
皮膚障害は20件(G&G薬理学書では副作用の75%と記述)で、そのうち13件は1~2日目で発症しています。投与初日から厳重な監視が必要です。低 ナトリウム血症および高カリウム血症の電解質異常は12件で、腎機能に注意が必要です。以下、白血球減少4件、血小板減少3件、薬剤熱3件、肝機能障害3 件、INR延長2件、低血糖は3~4日目で2件と続きます。多くは5~14日目の採血で確認されています。岩田教授の指摘通り、3日を超える使用は有害と なる傾向が認められました。
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同剤を安全に投与するためには、適応症例を厳選し、投与計画も厳密に管理すべきです。例え ば、尿路感染には反復性症例で3日間のみ使用すること、肺炎には早期から副作用を監視しながら使用することなどです。年齢や腎機能を考慮し、適宜減量も行 います。多人数への使用や投与期間延長などは注意が必要です。副作用の頻度が高いので使用が制限される、という認識でいてください。
(民医連新聞 第1525号 2012年6月4日)
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