副作用モニター情報〈369〉 ダビガトラン(プラザキサ)の副作用
ダビガトランは2011年3月から販売が開始された抗凝固剤です。何らかの原因で血管内に血栓ができて詰まりやすくなった患者に処方される薬です。静脈系の血栓を予防する効果が高く、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制の適応となっています。それまでこの病気 には、ワルファリンが広く使用されていました。しかし併用薬や食物によって効果が変動し、凝固能を頻回に検査しなければならないので、当初「凝固能の検査 が不要」とされたダビガトランへの切り替えがすすみました。
しかし日本でダビガトランの使用が始まると、高齢や腎機能低下の患者さんを中心に出血性の重篤な副作用が多発し、死亡症例も報告され、安全性速報(ブ ルーレター)が発出しました。厚労省への副作用報告2011年度487件のうち凝固能低下や出血が原因と考えられる報告が256件あり、死亡は26人(う ち出血性の死因14人)にのぼっています。(独法医薬品医療機器総合機構ホームページ2012/2/14現在)
民医連の副作用モニターにも21件、12症例の報告が寄せられました。うち4件は血尿、PT-INR (プロトンビン時間国際標準比、 外因性凝固系を反映)・aPTT (活性化部分トロンボプラスチン時間、内因性の凝固系を反映)が増加するなどの出血傾向でした。
症例)
70代後半の男性。推定クレアチニンクリアランス57.6。心房細動による脳塞栓予防目的でプラザキサ(110)1回1cap1日2回で処方
投与14日目 PT-INR 1.92、aPTT 57.9
投与28日目 PT-INR 3.06、aPTT 53.7
→プラザキサ中止しバイアスピリンに変更
投与33日目 PT-INR 0.98、aPTT 26.6
この方は、高齢で腎機能が低下気味だったため常用量より少ない量で開始し、検査も定期的に行っていたので対応できましたが、凝固能の測定を定期的に行っていなければ、出血性の合併症が発現していた可能性もあります。
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ダビガトランは、決して“検査が不要な手軽な抗凝固薬”ではありません。服用中は腎機能や凝固能の測定が必要です。ダビガトランは血液凝固系の最終段階 を阻害するため、PT-INRだけでなくaPTTをモニターし、出血や貧血等の徴候を十分に観察する必要があります。
薬剤の半減期は短いので、中止すれば凝固能の回復は早いと考えられますが、出血しても中和剤がないため、輸血などの対症療法となることを考慮しなければなりません。
(民医連新聞 第1521号 2012年4月2日)
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