副作用モニター情報〈410〉 ブプレノルフィン貼付剤と鎮痛剤の併用による副作用
ブプレノルフィン貼付剤は、治験時で半数以上に吐き気、2割に浮動性めまいが生じています。副作用管理が求められる製剤であり、注意が必要です。
最近の鎮痛剤はNSAIDsの長期処方が減少する一方、アセトアミノフェンやGABA関連薬剤だけでなく、弱オピオイドのトラマドール内服やμ受容体部 分作動剤のブプレノルフィン貼付剤の使用が増えています。消化管障害や腎障害を起こしにくいとの理由だけでなく、適応が拡大したことも一因でしょう。
症例)80代男性
トラムセット配合錠(一般名:トラマドール塩酸塩)を服用中にノルスパンテープ(一般名:ブプレノルフィン貼付剤)を追加し、吐き気を起こした。両下肢 の痛みで鎮痛療法開始、メトクロプラミド併用のもとトラムセットを漸増したが、さらなる除痛を希望したため、トラムセット4錠から2錠に減量したうえでノ ルスパンテープ5mgを追加。その2日後にめまいと吐き気がひどくなり、ノルスパンテープを剥がし、その後すぐに症状は改善した。
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非経口投与のブプレノルフィン製剤で起こる嘔吐や悪心作用は、化学受容器引き金帯(CTZ)を介する機序、前庭を 介した機序の2通りで説明が可能です。症状を軽くするためには、ドパミン2受容体阻害作用のあるメトクロプラミドやプロクロペラジンなどの使用だけでな く、前庭症状への対策として抗ヒスタミン剤の使用や両方の作用を持つペルフェナジンの使用などの方法が考えられます。
Goodman&Gilman薬理学書には、ブプレノルフィンは「作用の発現はモルヒネより明らかに遅く、一方でμ受容体からの解離半減期は166分と 非常に長いため、臨床効果は血中濃度と一致しないのが特徴」と紹介されています。ブプレノルフィンとトラマドールにおける受容体親和性を比較したデータは 掲載されていませんが、早期に吐き気の症状が治まったのは、トラマドールがブプレノルフィンの受容体からの解離を促進したからかもしれません。相互作用を 予測し難いオピオイド関連薬の併用はしないのが無難でしょう。
ちなみにトラマドールは強度の痛みや慢性痛の治療にはそれほど有効ではないと記述されていました。治療の参考にしてください。
(民医連新聞 第1566号 2014年2月17日)
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