副作用モニター情報〈358〉 長時間作用型抗インフルエンザ薬「イナビルR」の副作用速報
昨年発売された、1治療につき1回だけ吸入すればよいというラニナビル製剤「イナビル」の副作用報告が4件ありました。
症例1)小学生
イナビルの吸入2~3時間後、物が大きく見えた。翌日解熱。5-HT2A/2C受容体刺激による幻覚や視覚異常と考察した。
症例2)中学生
吐き気と頭痛(情報がアンケートの回答だけのため詳細は不明)。吸入薬の大半は飲み込まれるため、消化管5-HT3刺激よる吐き気、5-HT4による消化管蠕動運動亢進による腹痛と考察した。
症例3)40歳代男性
イナビルの吸入後から「今までに経験したことのないめまいとふらつきが出現した」と受診から2日目に連絡が入る。その4日後に電話で聞き取ったところ、まだ症状は残っていたが、落ち着いてきたとのことだった。
症例4)30歳代女性
投与の翌日、解熱したものの倦怠感、全身の感覚がないという違和感を訴える。痒みを感じた際には感覚がないため出血するまで掻いてしまう、歯磨きで出血 するまでブラッシングしてしまうなどの問題が発生していた。症状を抱えたまま2日後から仕事に復帰した。21日目にようやく違和感は消失。未知の副作用で ある可能性が高い。
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活性成分であるラニナビルは「リレンザ」の誘導体です。当モニターで既報の通り、セロトニ ン類似構造を持つため、それによって起こる様々な副作用が予測されていました。症例1と症例2はその予測と合致しています。また、血中半減期は40mg投 与で74時間と非常に長く、体内から薬物の93%が除去されるまで約12日かかります。症例3と症例4は、体内からの除去が遅れたために、いずれも症状が 長期間続いているケースだと思われます。数日間にわたり作用の持続する薬剤は、投与回数が少なくてすみ、メリットがあるように感じられますが、ひとたび副 作用が発現すると、副作用も長期間におよびます。ジスロマックと並び、投与後も油断せずに観察をしなければいけない薬剤のひとつです。
(民医連新聞 第1507号 2011年9月5日)
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