副作用モニター情報〈354〉 トリプタン系薬剤の副作用について
日本で発売されているトリプタン系薬剤は「イミグラン」「ゾーミック」「マクサルト」「レルパックス」「アマージ」があります。
片頭痛発作はセロトニンとの関連性が強く、セロトニンを投与することで片頭痛が治まること、5-HT 1B/1D受容体に選択的に作用する薬剤を投与す れば、セロトニン投与時に起こる悪心などの副作用が軽減できると言われています。しかし、発作時間の長い月経関連片頭痛などでは、トリプタン系薬剤の作用 時間が足りずに片頭痛発作が持続または再発してしまい、追加投与するケースが見られます。
主な副作用は悪心、嘔吐、しびれなどですが、トリプタン系薬剤は心血管を収縮させ、心筋梗塞などの心疾患患者では心筋への血流をさらに低下させる危険性があります。
さらに、トリプタン系薬剤を服用した患者の副作用報告に「胸部症候群」があります。これは服用後に胸部や咽喉の絞めつけ感、重感、圧迫感、痛みなどが現 れ、しばらくすると消失する症状です。胸部の異常感覚の原因は食道運動性の異常、肺動脈への影響、骨格筋のエネルギー代謝の異常、痛覚感受性の増加などが 考えられます。また、この胸部症状は冠動脈の虚血ではないと言われていますが、トリプタン系薬剤は血管作動薬であり、拡張した脳血管に作用しますから、冠 動脈にも少なからずとも作用をもちます。
片頭痛患者ではエルゴタミン製剤の過剰服用により虚血リスクが上昇することは知られていますが、トリプタン系薬剤の過剰服用ではリスクが上昇しないとい う研究発表もあります。ただし、一方では新しい研究発表には、心臓疾患リスクの高い女性では服用にあたって慎重になるべきであると報告されています。米国 頭痛学会(AHS)では心臓疾患のある人はトリプタン系薬剤を服用すべきでないと勧告しています。
全日本民医連の副作用モニターの過去1年間に報告された症例にも、基礎疾患に心血管系疾患がなくても、息苦しさ、圧迫感、胸部不快感などの症例報告があ がっています。また嘔吐、しびれなどの報告もあり、十分な服薬指導と注意喚起が必要です。
(民医連新聞 第1503号 2011年7月4日)
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