副作用モニター情報〈352〉 点眼剤の安易な変更に注意
点眼剤の変更による副作用がときに見られます。当副作用モニターに過去1年間で報告された点眼剤の副作用は24例あり、そのうちの約半数近くが変更によって発生しています。
症例の一部を簡潔に紹介します。
【症例1】ティアバランス点眼液からヒアール点眼液に変更後、眼痛(1例)、刺激感(1例)が生じた。
【症例2】キサラタン点眼液からタプロス点眼液に変更後、目にしみてチクチクした。
主成分が同じ先発品や後発品への切り替え、合剤への切り替えなどがありますが、症例2のように、室温保存可能な製剤への変更もよくあります。変更による 軽微な副作用の発現が少なくない理由の一つに、添加物(エデト酸ナトリウム・以下、EDTA)の関与が考えられます。
点眼剤による眼の刺激は、個々の知覚状態(感受性)、浸透圧、溶液中のイオン、pH、主薬そのものや添加物などが関与すると考えられます。
浸透圧:高張あるいは低張だと角膜損傷を起こします。塩化ナトリウムとして0.7%~1.5%、最大2.0%までが安全範囲と考えられています。
イオン:金属イオン、それと結合する酸イオンは組織内に侵入して知覚神経末梢を刺激します。
pH:点眼剤は涙液のpHに近いほど刺激が少なく、涙液には中和、希釈能、緩衝作用があるので、pH3.5~10.5に調整されます。
眼の状態:ドライアイや目の炎症では刺激感が強くなり、個人差もあります。
添加物:EDTAや塩化ベンザルコニウムには局所刺激性が知られています。
提示した症例では、変更後の製剤がEDTAを含んでいます。報告の中には、逆にEDTAを含まない製剤への変更例もありますが、数としては、明らかにEDTAを含む製剤への変更の方が目立ちます。
EDTAは0.34%の濃度で軽い目刺激を与え、1.0%では強い刺激を与える、とする文献があります。しかし、製品のEDTAの濃度は未公開です。刺 激の原因の特定は難しいですが、1つの要因として注意すべきです。
点眼剤は内服薬と異なり、「差し心地」がコンプライアンスにつながります。その意味でも安易な変更はすすめられず、変更する際は軽微な副作用も注意する必要があります。
(民医連新聞 第1500号 2011年5月23日)
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