副作用モニター情報〈349〉 シベンゾリン (シベノール=抗不整脈用剤) による低血糖
当副作用モニターNo.236「抗不整脈用剤による低血糖」で注意を喚起しましたが、その後も高齢者での重篤な報告が続いており、あらためてシベンゾリンによる低血糖の副作用を取り上げます。
【症例1】80代後半女性。シベノール300mg/日 服用中に退院、在宅管理4カ月目に食欲低下がみられ、その2週間後に急な意識消失発作があり、低血糖状態で入院。入院時の血清Cr値は 0.96mg/dl。血糖値の最低値は1日目が51mg/dl、2日目が42mg/dlだった。同薬を減量したが、入院3日目のシベンゾリン血中濃度が 1713ng/ml(正常トラフ値70-250、正常ピーク値200-800)だったため中止。その後は症状改善。食欲低下はシベンゾリンの抗コリン作用 の影響も考えられた。
【症例2】80代後半女性。慢性腎不全とII型糖尿病の 合併症あり。シベノール150mg/日を服用していた。一週間前から手足の震えがあり、その後、手や全身の脱力感が現れ入院となる。血清Cr値 2.4mg/dl、BUN57mg/dlで、腎性貧血と診断された。血糖最低値は94mg/dlと正常範囲にあり、シベンソリン血中濃度は 317ng/mlだったが継続となった。退院にむけ持参薬を自己管理していたが、体調不良で夕食がとれなかった日の夜、手の震えがひどくなり翌朝の血糖値 が35mg/dlまで低下。聞き取りからその日シベノールを重複(倍量)服用したことが判明。同薬を中止し症状は改善した。
シベンゾリンは膵β細胞のK(カリウム)ATPチャンネルを抑制し、インスリンを分泌させます。この作用は用量に依存し、特に血中濃度ピークが 800ng/ml以上で低血糖が起こりやすくなるといわれます。腎排泄型のため高齢者や腎障害患者では用量調整が必要です。
クレアチニン値を指標として投与量を推定する場合、高齢者では低栄養状態にある場合や加齢にともなう筋委縮などでクレアチニン産生量が低下し、クレアチ ニンクリアランス値が実際より高く推定されることがあるので注意が必要です。メーカーホームページにある「シベノール錠TDM推定サービス」が参考になり ます。
低血糖症状は意識消失なども伴う重篤な副作用です。高齢者の場合、症状が潜延化し食欲不振などの体調変化として現れたり、腎機能の悪化によって低血糖が 急激に生じることもあります。常にその危険性を念頭におき、定期的に血糖値をモニターし、必要に応じてシベンゾリンの血中濃度を測定すべきです。
(民医連新聞 第1496号 2011年3月21日)
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