副作用モニター情報〈348〉 2型糖尿病用剤(DPP-4阻害薬・シタグリプチン=ジャヌビア錠(R)、 グラクティブ錠(R)) の注意すべき副作用
シタグリプチンは、血糖保持に関与するホルモン・インクレチンに着目した薬剤です。インクレチンの分解酵素であるジペプチジルペプチダーゼ(以下 DPP-4)を阻害する血糖降下剤として開発されました。2006年にメキシコ、米国で承認、現在世界80か国以上で使用されています。日本では2009 年10月に「2型糖尿病」の効能効果で承認、12月に万有製薬(現MSD)、小野薬品工業から発売されました。2011年1月からは、長期投与が可能とな りました。
2010年10月までに報告されたシタグリプチンの副作用報告は5例で、腹部膨満、便秘、腹痛、下痢などの胃腸障害が4例、発疹が1例でした。
食後に下部消化管から分泌されるインクレチンは、血糖値に応じたインスリン分泌促進作用、グルカゴン分泌抑制に加え、胃内容物排出抑制、食欲抑制作用な ど多様な作用を有するため、胃腸障害の副作用が多いと考えられます。
重篤な副作用としてインタビューフォームにも記載されている「低血糖症」が、発売後問題になっています。特にシタグリプチンと他の糖尿病薬との併用療法 において注意が必要です。メーカー資料によると低血糖症の発現率は、シタグリプチン単剤投与で1.0%、併用療法でグリメピリドとの併用で5.3%、ビオ グリタゾンで0.8%、メトホルミンで0.7%と報告されています。
2010年5月、「インクレチンとSU剤の適正使用に関する委員会」は、SU剤治療中にシタグリプチン追加投与をする場合、SU剤を減量するよう勧告し ています。今回副作用報告のあった5例中2例は、グリメピリドに追加処方したものでした(減量せず低血糖症状なし)。さらに、SU剤では十分な効果が得ら れない症例に追加処方する場合、SU剤の投与量を減量したとしても長期投与は避け、十分な観察が重要です。
現在DPP-4阻害薬は、他にビルダグリプチン、アログリプチンが承認され、効能効果や併用可能な糖尿病薬に多少の違いはありますが、いずれもSU剤と の併用には十分注意が必要です。また、腎機能、肝機能が悪い場合投与量を減らすことを考慮すべきです。
(民医連新聞 第1495号 2011年3月7日)
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