副作用モニター情報〈273〉 モーラステープによる自家感作(じかかんさ)性皮膚炎
〔症例〕蕁麻疹(じんましん)が出やすい体質の女性。NSAIDs内服でアレルギー反応歴あり。
腱鞘炎(けんしょうえん)で夜間、手首にケトプロフェンテープを貼付。翌朝、もともとあった皮疹(ひしん)が急激に増悪したため、はがしたところ、その 日のうちに強い掻痒(そうよう)感とともに全身に拡大。四肢・背部に隆起した紅斑が拡がり、さらに前頚部・頭部・顔面、特に眼瞼(がんけん)、口唇(こう しん)には浮腫などを伴い、皮疹の増悪がみられた。その後、軽快しつつも1カ月ほど症状持続していたが、再度ケトプロフェンテープを使用。再び全身に拡大 増悪。大学病院でのステロイド剤による治療を受け改善した。
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本症例と類似したメーカー(久光製薬)報告があります。10代女性で貼付部位の光線過敏症から、急激に全身性へ移行、軽快に1カ月を要し、その後別の治療目的にて再度貼付し、再び全身性の薬疹が出現。全身的な色素沈着をきたしました。
一般的にケトプロフェン貼付剤では光接触皮膚炎の頻度が他のNSAIDs貼付剤に比べて高く、とくに貼付部位だけでなく全身への影響に注意喚起が必要です。この剤形ではケトプロフェンは高濃度の状態で基材に含まれているため、効率よく全身循環に移行します。したがって、本症例のような全身性の皮膚炎やス ティーブンジョンソン症候群、気管支喘息など全身におよぶ副作用への注意が必要になります。患者指導も全身管理に視点を広げ、再発した場合には重篤な副作 用になりうる危険性を周知徹底してください。
また、外用剤という気軽さから、副作用出現後に自己判断で再び使用し、症状悪化を招くことがあります。本剤使用にあたっては、事前のアレルギー歴の聴取、ならびに副作用が生じた場合、その後の指導を徹底することが重要です。
副作用発現後の対応としては、今後の使用可能な薬剤を明らかにするために、皮膚科専門医と連携し、光パッチテストによる確定診断と原因物質の究明、被疑 薬を積極的に試み、薬の安全な使用に努めることが必要です。
(民医連新聞 第1409号 2007年8月6日)
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